「セクシー田中さん」の報告書に決定的に欠けている“問題の本質”
セクシー田中さんの問題、日テレのドラマ制作の現場では何が起きていたのでしょう。小学館の報告書を解説した「『セクシー田中さん』報告書に批判殺到の根本原因」に続き、日テレ側の報告書を読み解いていきます。 【画像】日テレの「セクシー田中さん」調査報告書 ■② 脚本家の視点 ドラマの制作にあたっては日テレドラマ班のプロデューサーや脚本家などを含むコアメンバーによってストーリーが検討されます。この検討会議のことを「本打ち合わせ」ないしは「本打ち」と呼びます。
小学館の報告書では触れられていませんが、漫画原作のドラマ化にあたってストーリーを考えるのは脚本家単独ではありません。プロットから脚本までの内容はコアメンバー5名(後半から6名)による合議で決まるのです。 日テレの報告書によれば「原作を大切にしよう」という話はコアメンバーの間で当初から共有されていました。原作者が問題視した脚本家も本人は「原作漫画がしっかりしているので、大きく変える必要はない」という意見でした。
制作チームのコアメンバーは原作の世界観を大切にするために、原作者に対して登場人物のキャラクター表を要望していました。が、それは存在していないため手に入りませんでした。 これは漫画家の仕事のプロセスを考えると当然で、自分の頭の中に入っているのです。そして連載の間、ネームを描き、スタッフで手分けをして作画し、ペン入れをして仕上げという忙しいスケジュールを考えると、ドラマのためにあらたな設定書を作るという時間がとれないことも理解できます。
■ドラマ化する際に改変が必要になる事情 とはいえその前提で原作だけを深く読み込み、プロットを作成するたびに、原作者から「キャラ崩壊が起きている」と指摘される状況は、本打ちに参加するドラマ制作のコアメンバーにとってもきつい状況だったと推察されます。 というのも漫画のドラマ化にあたっては改変がどうしても必要になります。報告書ではその理由が挙げられています。まず最初に漫画と違い、1話1話の中で視聴者を飽きさせないために盛り上げる場面が何か所も必要だという理由があります。ロケ場所の制約や予算の制約。尺が足りないことで何らかのオリジナルエピソードが必要になるという理由もあります。俳優の演技やブランドイメージ、スケジュールの制約、そしてスポンサーへの配慮などドラマ化にあたっての改変は必然的に発生します。