USスチール買収阻止に経済界で懸念の声広がる 対米投資委縮の可能性も
日本製鉄によるUSスチール買収に対するバイデン米大統領の阻止命令を巡り、経済界からは7日、対米投資への悪影響を懸念する声が相次いだ。日本は米国の最大の投資国だが、今後、投資に二の足を踏む企業が出てくる可能性もある。 「経済安全保障を理由とした(米国政府の)決定が日米の経済関係に影響を及ぼさないか憂慮している」。経団連の十倉雅和会長は7日、都内で開かれた経済3団体の新年祝賀会後の3団体共催の記者会見で、バイデン氏の買収阻止命令に強い懸念を示した。 日本企業は対米投資で5年連続トップだ。米国で多くの雇用も創出している。十倉氏は「米国政府は懸念を払拭するように適切に対応してほしい」と呼びかけた。 日本商工会議所の小林健会頭も「公正なる法の下で、自由な経済活動を行う中核が日米だった。連帯を疑心暗鬼にさせる動きは好ましくない」と危機感を示した。 政治介入による買収阻止を目の当たりにして、企業のトップも不信感を強めている。出光興産の木藤俊一社長は「根拠は安全保障というが、具体的に何が問題なのか聞きたい」と疑問を呈した。キリンホールディングスの磯崎功典会長も「(結論が変わらなければ)対米投資に二の足を踏むようになる」と述べた。 一方、三井不動産の植田俊社長は「米国の不動産は力強く、人口も増えている。北米に注力して投資することに変わりはない」と語った。 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「(買収阻止命令は)日本は米国の仲間ではなかったというような大きな失望感を日本企業に与えたのではないか」と指摘。「今後の対米ビジネスを委縮(いしゅく)させ、双方の経済にも悪影響を与えうる」との見方を示した。