欲求に駆られて衝動買いした「まったく不要な家具」が、実は最高だった話【フランス在住・井筒麻三子】
人気YouTubeチャンネル「GOROGORO KITCHEN」のMamikoこと井筒麻三子さんが、パリでの家探しや新しい暮らし方を綴ります。 井筒さんが衝動買い。まったく不要なのに、実は最高だった家具はこちら【フランス在住・井筒麻三子】 先週の記事で、「アンティーク家具は、緊急性のない段階から欲しいものの内容を熟考しておくと、満足のいく品を見つけやすい」ということを書いた。だがアンティークの場合そういった家具とは別に、考えてもいなかったけれど心惹かれるものに遭遇し、購入するか否かを悩むこともある。我が家はまさにそんな家具に、先日巡り合ってしまった。 以前からたまに訪れていたアンティークショップ Belle Lurette。広くて家具類が多めだったので、家具を買い足す必要のなかった以前は、パトロールはしても買わないことが多かった。しかし、今こそ家具が大っぴらに(?)買えるチャンス! 夫とあのお店に行こうよ~という話になり、久しぶりに訪れることに。 お店に到着して一番自分で驚いたのは、「家具を探す」というマインドがあると、いかに目に入ってくるものが多いかということ。以前は「家具は買えない」と思っていたから、そういったアイテムを無意識に視界から外していたよう。気持ちの違いで、ここまで見えるものが違うのかと、正直びっくりした。 そうは言っても、そこはアンティークショップ。色々素敵なものがあるけれど、我々が思い描いていたサイズの棚やイメージ通りのコーヒーテーブルがある感じではない。まあでも、せっかくだから色々見て回ろう~くらいの感覚で、店内をあちこち物色していた。
「我が家はとにかくライトがないから、何かフロアライトを買いたいね~」なんて話しながら歩いていると、突然ホワッ! と気分が上がるような、小さめの食器棚を発見。ブルーグリーンの色も素敵だし、佇まいもただただ美しい。お値段も、決して法外な額ではなかった。 それまでまったく、新しい食器棚を買おうなんて気持ちはなかった。でもその食器棚の美しいデザインといい色といい、私の好きなディテールが詰まっていて、グッと心を掴まれた。さらにオーナーの説明曰く「19世紀後半のもので、作風はルイ16世スタイル。ルイ16世やマリー・アントワネットが好きだったリボンのデザインが特徴的ですね。扉に配されている鏡は、水銀でできているんですよ」。つまりこれを買うと、歴史の授業で耳にしていた(だけの)ルイ16世やマリー・アントワネットにつながるものが、我が家にやってくるってこと? なんかそれすごくない? それでも、私一人だけだったら「そうはいっても必要じゃないしね」と自分に言い聞かせて諦めていたかもしれない。それがまさかの、「これ最高! 絶対買うべき」という夫の一押しが。結局、何に使うのかも考えないまま購入してしまった。 自宅に帰ってからしかし、「あまりに考えなさすぎだった。どこに置くのだ?」と正直悩んだりもした。けれど家具が到着してからは、あちこちに配置して他の家具とのバランスを見る……を繰り返し、ここならばと思える場所を確保することができた。 今この原稿を書きながらも、横目で見ると、やはり美しい食器棚。買ったことに後悔は全くないし、買わなかったら後悔していたなあと思う。とはいえこんな無謀な買い方は、たまたまうまくいったラッキー案件かもしれない。それでも、偶然見つけたものが今のリビングに必然として存在しているのを見ると、冒険ってそれなりに大事なのかもなあと思ったりする。その匙加減はなかなか難しくて、今後同様の機会があったとしても、毎回悩んでしまうだろうけれど。 撮影/Yas
井筒 麻三子