「半数以上は小説だと思ったのに」女優・南沢奈央が“2024年に読んだ100冊”を振り返ってみて、わかったこと
雪で始まり、雪で終わる
日々、読んだ本を記録している。一年ごとに分けているので、その年に何冊ほど読んだのかもすぐに分かるようになっている。 2024年はどんな本を読んだのだろうかと振り返ってみると、川端康成の『雪国』から始まったものの、小説は約100冊中35冊ほどであった。半数以上は小説だと思っていたので驚いたが、たしかに実感として、最近は詩や短歌・俳句に興味が向いているのでそうなるのも納得ではある。 また、姪っ子甥っ子がいることで、絵本への食指が遠慮なく動くようになった。書店に行けば必ず、絵本・児童書コーナーは覗く。そうしてすぐに姪っ子甥っ子の存在は後回しになって、自分で読みたいものや飾っておきたいものを手に取ってしまう。そういえば『パンどろぼう』は、結局姪っ子にあげないまま手元にある……。先日3歳の姪っ子にあげた『大ピンチずかん』は、一人でこたつで熱心に読んでくれているらしいから、やはり『パンどろぼう』も今度のお正月に持っていってあげようか。 逆に人にはあげられないなという本が二冊ある。長田弘さんの詩集『深呼吸の必要』と歌人・穂村弘さんのエッセイ集『蛸足ノート』だ。年中すぐに手に取れる場所に置いておき、今年は何度も手に取った。『深呼吸の必要』に関しては、秋に舞台の制作と公演で約1カ月半の間滞在していた岐阜県可児市で大変お世話になった。枕元に置いておいて、テキトーに開いて一篇の詩を読んでから寝るというのがルーティンだった。不思議なもので自宅に戻ってきてからはしていないが、時々ふと読みたくなって開く。 そして下半期は、日本経済新聞の「プロムナード」というコーナーで毎週エッセイの連載をさせていただいたのが、ある意味、新しい挑戦であった。本や落語といったテーマがない中で、純粋なエッセイを書く。とても楽しい時間だった。その執筆の際に、参考にさせてもらったというか、“書く”という推進力をもらっていたのが、『蛸足ノート』だった。こちらも読売新聞で連載されていたものだ。軽快で、でも味わい深い文章。何気ない日常を切り取りながらも、それを受け取る感性が魅力的で、ハッとさせられることも多々。そして穂村さんの使う言葉や文章のリズムがとても好きで、読むと、いろんなことをわたしも言葉にしたいと思わせてくれるような力があるのだ。お世話になりました。これからもよろしくお願いします。