産直通販サイト、小売業者介さず農家の実入り多く…「適正価格で買ってもらえれば持続可能な農業に」
「キャベツとお芋大好き」。今月初旬、東京都港区のマンションの一室に、千葉県我孫子市の農園から段ボール箱が届いた。箱を受け取って開けた会社員刈内里美さん(41)の長女(7)は、笑顔で声を上げた。 【写真】「食べチョク」の秋元里奈社長
箱には、キャベツやサツマイモなど10種類の野菜が詰め込まれていた。2人は笑って顔を見合わせ、刈内さんは「どんな料理にして食べようか」と喜んだ。
利用するのは、日本最大級の産直通販サイト「食べチョク」の定額サービス。日本各地の農家が旬の野菜を選び、定期的に配送する。長野県で地元の野菜を食べて育った刈内さんは、子どもにも野菜のおいしさを知ってもらいたいと願い、数年前から利用を開始。届く野菜には生産者からのメッセージやおすすめの調理法も同封されている。
「東京では手に入れにくい、目が覚めるようなおいしさの野菜を玄関まで届けてもらえるのがうれしい。サイトを通じて知ることができた農家さんを応援するつもりで野菜をいただいている」と、刈内さんは話す。
生産者が自ら価格設定
食べチョクは株式会社「ビビッドガーデン」(東京)が2017年に始め、コロナ禍で販路を失った農産物を取り扱ったことを契機に急成長。生産者が自ら設定した価格の農産物をスマートフォンで購入でき、現在は会員数が100万人以上いる。
同社によると、一般的にスーパーなどで購入した場合、農家の利益は販売価格の3~5割とされるが、食べチョクでは小売業者を介さず、8割が農家の実入りとなる。固定ファンがつき、売り上げが4倍以上になった農家もいるという。
同社社長の秋元里奈さん(33)の実家は相模原市で小規模な野菜農家を営んでいたが、やがて廃業し、耕作放棄地に変わった。秋元さんは「やめていく農家を減らすために、農家のこだわりや大変さを消費者が理解した上で、適正価格で売買できる仕組みを作りたかった。適正価格で納得して買ってもらえれば、持続可能な農業につながる」と話す。
産直サイトは、「雨風太陽」(岩手県花巻市)が運営する「ポケットマルシェ」など複数あり、広がりを見せている。