長期の保有でわからなくなってしまった…「上場株式の不明な取得費」を確認する方法【税理士が解説】
株式の取得価額は、納税額を算定する際に必要になります。しかし、その確認方法が複雑でわかりづらいという声があるのも現実です。本記事では、税理士の伊藤俊一氏による著書『税務署を納得させるエビデンス 決定的証拠の集め方』シリーズ(ぎょうせい)から、上場株式譲渡時の不明な取得費の確認方法について解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング
上場企業株式を譲渡した場合の取得費の算出方法
Q 株式を譲渡した場合の取得費に係るエビデンスを教えてください。 A 上場企業株式売却と取引相場のない株式を売却する場合で対応は異なります。取引相場のない株式は通常旧券面額(旧会社法にあった資本金計算における1口当たり旧券面額)で計算せざるを得ないケースが多く、これと概算取得費の比較になります。したがって下記では詳細な解説を加えません。 なお、本記事では一切割愛しますが、取引相場のない株式については、売却する前に組織再編成等々を用いて税務上の取得原価(取得費)を再計算(取得原価を増加させる)される手法もあります。
取得費算出において「証拠」にできる書類
上場企業株式売却における取得費の証拠は非常に単純です。下記は大阪国税局資産課税課、資産課税関係 誤りやすい事例(株式等譲渡所得関係 令和3年分用)も参考にしています。 〇証券会社が発行する取引報告書 取引報告書以外に、取引残高報告書・月次報告書・受渡計算書 〇証券会社に直接確認 証券会社で過去10年分について保存が義務付けられている「顧客勘定元帳」の法定帳簿 〇信託銀行等が発行する株式異動証明書 名義書換日が判明する場合に限ります。 〇「名義書換日」さえわかれば、取得時期を把握して、その時期の相場をもとに取得費を独自算定 〇預金通帳 日記やメモ等々でも可能。これは不動産の取得費と同じです。 売買などで取得した株式は、株式名義が書き換えられた日の「終値」で算出してOK 令和元年11月28日裁決(裁事117集)は、「有償取得されたことを前提に、名義書換日の相場(終値)で取得価額を算定することも明確かつ簡便な推定方法として合理性を有する取得価額の把握方法であると解される」と判断しており、 上記方法「〇「名義書換日」さえわかれば、取得時期を把握して、その時期の相場をもとに取得費を独自算定」について有償取得されたことを前提に、名義書換日の相場(終値)で取得価額を算定することも明確かつ簡便な推定方法として合理性を有する取得価額の把握方法であるとされています。