長期の保有でわからなくなってしまった…「上場株式の不明な取得費」を確認する方法【税理士が解説】
「名義書換日の終値で算出は合理的である」とされた裁判事例 重要情報 (譲渡所得 取得価額の認定 その他) 請求人が相続により取得した上場株式の譲渡所得に係る取得費は、当該株式の被相続人への名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)によって算定することも合理的な取得費の推定方法であると判断した事例 (令01-11-28公表裁決)TAINSコードJ117-2-05 《ポイント》 本件は、請求人が相続により取得した上場株式の譲渡所得の計算上、控除する取得費に算入する金額は、当該株式の被相続人への名義書換日を確認し、当該名義書換日の終値により算定することも合理性を有する取得価額の把握方法であると判断したものである。 《要旨》 原処分庁は、請求人が相続により取得した上場株式(本件株式)の取得費について、できる限りの調査を尽くしたものの、有償で取得した上場株式等はごく一部であり、大部分の上場株式等の実際の取得価額は判明しなかった旨主張する。 しかしながら、名義書換日が判明している株式については、当該名義書換日を取得時期とし、その時期の相場(終値)で取得価額を算定することも、明確かつ簡便な推定方法として合理的であると解されるから、本件株式の取得費は概算取得費によらず、総平均法に準ずる方法により算定すべきである。 1株あたりの取得単価がわからない場合、「名義書換日の終値で算出可能」とされた事例 (参照) 〇国税庁課税部資産課税課情報「株式譲渡益課税のあらましQ&A」 (平成31年1月)問19「従業員持株会を通じて取得した株式の取得費等」 1 従業員持株会(以下「持株会」という。)を通じて取得した株式は、手元にある「投資等報告書※1」や「退会(引出)精算書※2」などに記載されている「簿価単価※3」を基に取得費を計算して差し支えない。 ※1 「投資等報告書」(名称は持株会によって異なる。)は、半年に1回、持株会から各会員に通知され、拠出金額、取得株式数、簿価単価(1株あたりの取得単価)などが記載されている。ただし、その記載内容は持株会によって異なり、簿価単価が記載されていない場合もある。 ※2 「退会(引出)精算書」(名称は持株会によって異なる。)は、退会時又は一部引出し時に持株会から各会員に交付され、退会時点又は一部引出し時点での拠出金額、取得株式数、簿価単価(1株あたりの取得単価)などが記載されている。ただし、その記載内容は持株会によって異なり、簿価単価が記載されていない場合もある。 ※3 「簿価単価」の記載がない場合には、「拠出金額」を「取得株式数」で除した金額とする。 2 投資等報告書等がない場合や投資等報告書等では上記1の方法による取得費の計算ができない場合には、(持株会から引き出したときの)名義書換日の相場(金融商品取引業者のデータベースや当時の新聞記事等による終値)を基に取得費を計算して差し支えない。 (持株会を通じた株式の取得価格+同一銘柄の株式の取得価格)÷総取得株数×売却株数=取得費 持株会を通じて取得した株式のほかに、同一銘柄株式を購入等している場合には、 持株会を通じて取得した株式の取得価額と持株会以外で購入等した株式の取得価額とを基に、総平均法に準ずる方法により計算した1株当たりの取得費に売却株数を乗じて計算した金額が株式の収入金額から控除される取得費となる。 伊藤 俊一 税理士
伊藤 俊一