ジョシュ・バーネットも興奮した国立競技場9万人の熱狂。「Dynamite!を超える大会はアメリカでも開催できない」
「コミッションというのは本当に形だけで、これもまた無能な人たちの集まりです。無能な政治家が天下りする形でいい肩書をもらって居座っているだけ。実際、格闘技については何も知らないのに、口だけ出すという問題も起こっている。コミッションに携わっている人たちはリスクを負わずにお金だけを得ようとしているだけです」 ジョシュの立場を考えると、言葉にトゲがあるのも当然だろう。過去にドーピング検査で3度も禁止薬物が検出されたせいで、出場停止などの処分を受けているからだ。だが、彼の名誉のために付け加えておくと、2016年に3度目の出場停止処分が課された際は異議申し立てを行なった結果、処分は覆され「シロ」が立証されている。 筆者もドーピング検査を実施することには賛成だが、やるならば受けた選手が納得するだけの精度が求められるだろう。選手の寿命は長いようで短い。長期間の出場停止処分を受ければ、それだけで選手の人生は大きく変わってくるのだから。 競技化が進む中で、UFCは創成期の売りだったワンデートーナメント制を廃止し、マッチメークは全てワンマッチ形式に切り換えた。スタート以降、ずっとワンデートーナメント方式を代名詞にしているK-1とはえらい違いだ。その理由についてジョシュの見解は明白だ。 「これは競技の差ではなく、国としての格闘技の認識の差なんだと捉えています。日本ではトーナメント方式の試合に慣れ親しむ土壌が生成された結果、K-1グランプリは非常に大きな舞台に成長した。対照的にアメリカではいかに問題なくプロモーションしていくかということに重きを置いた。そう考えるとワンマッチ方式のほうがイージーだったということですよ」 22年前の夏、ジョシュが国立競技場で味わった未曾有の熱狂は何だったのか。あの『Dynamite!』を超える規模の格闘技イベントはいまだ行なわれていない。 (つづく) 文/布施鋼治 写真/長尾 迪