「てりたまバーガー」「大人様ランチ」…繁盛店が投入する"季節感のない"期間限定メニューの本当の意図
■お客が帰ってくるしかけ メリット⑥間隔の空いたお客が戻ってくる理由になる 一年中、ずっと途切れずに来てくださるお客というのは、とても大事ですが、数が限られます。また、新規客の数が、毎年減っていく離反客の数を上回れば売上が減りませんが、これが難しいことは、ご存知だと思います。足が遠のいたお客にお店を思い出してもらえて、久しぶりの来店を期待できる。これも大きなメリットです。 マクドナルドでは、月見バーガーだけでなく、夏のハワイバーガーシリーズや冬のグラコロバーガーがあります。 吉野家だと夏の牛皿麦とろ御膳、冬の牛すき鍋膳がありますし、ロイヤルホストは1983年から夏のカレーフェアを続けています。これらの商品についているファンが、店外のポスターやノボリを見ると帰ってくるのです。 そう考えると、「冷やし中華、始めました!」というキャッチコピーを考えた人は偉大です。「夏に食べやすい商品が、今年も帰ってきましたよ!」と、離れていたお客に呼びかけているわけです。 このように、季節感のある期間限定商品は強いです。 しかし、吉野家で不定期に登場する黒カレーや親子丼のように、時々しか売らないけれど、確実に売れる商品も有効です。 ちなみに吉野家の親子丼は、牛丼(並)より15%ほど高いです。そう、鳥を牛より高くできるのが季節商品なのです。 メリット⑦宣伝しやすい 期間限定商品は、売り込みやすいです。ずっと変わっていないグランドメニューの中に差し込みメニューを入れて、期間限定だと訴えると、目立ちます。 高額帯の商品は、その日には売れなくても、「おいしそうだな。よし、給料日の後には食べてみよう!」などと思ってもらえる可能性があります。
■バズる宣伝ネタになる また、写真を、店外に設置しているA看板に飾っても、窓に貼っても目立ちます。この写真がしょっちゅう変化すると、より目立ちますし、活気が出ます。 先日のランチで行ったお店は、店外のA看板に「東京ウォーカーにのりました!」というPOPと、おそらく数年はたっている色あせた誌面を飾っていました。過去の栄光より、未来への一歩。商品も情報も新しいほうがいいです。 期間限定商品があると、SNSでの投稿も楽になり、反応も良くなります。グランドメニューの中の商品について投稿するより、気持ちが入りますし、視聴者も新鮮な情報を喜ぶからです。 しょっちゅうやっているとフォロワーが増え、拡散されやすくなります。 メリット⑧活気が生まれる 継続して期間限定商品を販売していると、常連さんは「そろそろ次の限定品が出るかな。楽しみだな!」と、思ってくれるようになります。店外の窓に貼られた写真がしょっちゅう変わるのを見て、「1回、入ってみようかな?」と思う人も出てくるでしょう。 長く続けるには努力が必要ですが、ガヤガヤやっていると、自然と活気が生まれてきますし、人が集まってきます。 図表1にあるのは「人が集まる9カ条」というもので、大阪の釈迦院に伝わる言葉です。 期間限定商品を販売するメリットは、ここがゴールです。楽しみながら続けて、この状態を目指してください。 ---------- 難波 三郎(なんば・さぶろう) 中小企業診断士(飲食店専門) 1967年生まれ。ながらくフリーターとして多くの店で修業した後、1999年に渋谷区で飲食店を開業。2006年に中小企業診断士の資格を取得し、『メニューが飲食店を救う!』(こう書房)を出版。希少なメニュー関連の本としてヒット。これを機に全国で活動するようになる。現在は出身地である岡山市に所在し、近隣県の商工会議所、銀行などから依頼を受けて中小・個人の飲食店を中心に利益増加のアドバイスを行う。同時に、週の半分は東京など都市部からの依頼を受けて全国で活動。年に約30社と向き合いながら、年に約50回のセミナーを開催している。日本調理製菓専門学校経営学非常勤講師。 ----------
中小企業診断士(飲食店専門) 難波 三郎