切り取った日常 等身大の姿が問う水俣病 写真家が写真集発売
水俣病を撮り続けている写真家、小柴一良さん(76)=大阪府熊取町=が写真集「水俣物語」を出版した。1956年の水俣病公式確認から68年。患者の日常を淡々と切り取った作品を多く収め、被害を受けた人々の等身大の姿を通じて水俣病を改めて問うている。 【写真でみる】切り取った日常 等身大の姿が問う水俣病 写真家が写真集発売 小柴さんは昭和を代表する写真家、故土門拳の撮影助手などを経て1974年に熊本・水俣へ。網元の娘の女性と結婚し、水俣湾で水銀汚染魚の捕獲作業に携わりながら撮影を続けた。5年後に水俣を離れたが、同じく水俣病を撮り続けている写真家、桑原史成さん(88)=東京都=の勧めで2007年から再び水俣へ通い続けている。 写真集は「MINAMATA STORY 1971―2024」の副題をつけ「受難者たち」「胎児性・小児性水俣病」「子供たち」「海と地」の4章で構成し、モノクロ写真251点を収めた。 患者の一人が居酒屋でくつろぐ元気だったかつての姿と、24時間介護を受ける今の姿を並べるなど、時の流れを示す写真も多い。小柴さんは「水俣病ゆえに平穏な人生を奪われた一人ひとりの暮らしを静かに伝えたかった」と話している。「東京物語」など小柴さんが好きな小津安二郎の映画作品を意識し、ストーリー性を考えて作品を選んだという。 水俣病をテーマにした小柴さんの写真集は「水俣を見た7人の写真家たち」(07年、共著)と「水俣よサヨウナラ、コンニチワ」(13年)に続いて3冊目。「水俣物語」はB5判、256ページ。3300円。11月20日発行。弦書房(福岡市)刊。【西貴晴】