【ABC特集】定期健診で「A判定(異常なし)」だったのに・・・実は胸のX線写真に“影”が 知らぬまますごした女性は1年後ステージ3のがんに 「1年前、なぜ異変を教えてくれなかったの」と悲痛な訴え
毎日20種類近くの薬をのみ、肺がんと闘う50代女性。勤務先の定期健診の際、胸のレントゲン検査の結果を医療機関から正しく伝えられず、治療のチャンスを逃してしまった、として裁判を起こしています。 早期発見が大切ながん治療で、何が起きたのでしょうか。
謎の「A」判定
大阪府の女性宅を訪ねると、何種類もの紙袋がぎっしり詰まったカゴがありました。抗がん剤、痛み止め、荒れた胃の薬など。朝・昼・夜・就寝前の1日4回に加え、症状が出たときも随時、薬を飲まなければなりません。 「元々薬が大嫌いだったので、この生活は本当に苦痛です。関節痛などの副作用も苦しい。体調が悪くなると『がんが転移しているのでは』と気になり、不安は尽きません」 初めて体の異変を告げられたのは、2017年9月のことです。 勤務先の年1回の定期健診で、地元の医療機関で検査を受けた際に「D2(要 精密検査)」と判定されたのです。「胸部X線」の所見欄には「右肺に浸潤影の疑い」との記載が。別の病院で見てもらうと、診断名は「肺がん」で、すでにステージ3に進んでいると告げられました。
同じ医療機関で受けてきた健康診断は、これまで「A(異常なし)」判定だったのに……。 前年(2016年)の診断書を見返した女性は、その「A」とは別に、小さく書かれた「右肺尖 結節影の疑い」という文字を発見します。つまり、肺の影は1年前にも確認されていたのです。 がんは、早期発見が重要です。1年前の検査で異変をつかんでいたのなら、なぜ「A」判定を出したの? 女性は医療機関に尋ねましたが、明確な説明はなかったといいます。
システムに「ロック」が
正しい検査結果を教えられず、がんの治療機会を逃してしまった、として女性が損害賠償を求めて2020年11月に起こした裁判で、ようやく経緯がみえてきました。 胸部レントゲンは、医師が画像から異変を探す「読影(どくえい)」という作業がポイントです。裁判の書面によると、医療機関は2016年の健康診断のとき、医師2人が読影し、いったんは「異常なし」と判断。「A」(異常なし)とコンピューターシステムに入力したといいます。