ロールスロイス、ベントレー… 英クラシックカー動態保存 博物館で感じる車の「息吹き」
ロールスロイス、ベントレー…。英高級車がずらり並ぶ、埼玉県北部にあるワクイミュージアム。英クラシックカーを「動態保存」つまり動く状態で展示する珍しい博物館だ。かの吉田茂元首相のロールスロイスなど数々のコレクションを一目見ようと、ミュージアムを訪ねるエンスー(熱心なクルマ好き)が引きも切らない。 【写真】元首相の側近だった白洲次郎氏のベントレー ■走れる状態に意義 展示する15台はいずれも1世紀前後もの歴史があるクラシックカー。しかし、整備・メンテナンスを徹底し、いまなお全て自走可能。これを同館では動態保存と呼んでいる。 「車である限り走れる状態を保つことに意義がある。車の楽しみはドアの開閉を見、エンジン音を聞き、走る姿に接してこそ」。涌井清春元館長(78)はこう語る。そして「生きている車たちの息吹きを感じてほしい」と。 もともとサラリーマンだった涌井氏が30年という歳月をかけ、300台超を収集。「自身の後半生をかけた夢の博物館」として平成19年に開館させたのが同ミュージアムだ。 現在は「根本からエンスー同士」である若林恭平さん(29)に館長ポストを託している。 若林館長に依頼し、元首相のロールスロイス(1937年式、4257cc)のエンジンをかけてもらった。ドルン、ドルン…。重低音とともに運転席の各メーターの針が揺れ出す。革製椅子は傷んではいるものの、全体に高級家具の趣を感じる。磨き込まれ黒光りする外観に、どっしりした構えが100年の歴史を感じさせた。 ■内装まるで高級家具 一方、元首相の側近だった白洲次郎氏のベントレー(1924年式、2994cc)はスポーツカーらしい轟音(ごうおん)といえるエンジン音。着座すると背中に心地よい揺れが広がり、辺りには排ガスの匂いが立ち込めた。 他にも、現存する世界最古のオリジナルベントレーの展示など見どころが豊富。群馬県にほど近い県北の同館にはクラシックカーに目がないエンスーが一人また一人とやってくる。 若林館長は「剥製をそろえた博物館というよりも動くモノを展示する『動物園』に近い。1世紀もの歴史があるクラシックカーはいわば技術遺産。大勢の人に見てもらい後世に伝えたい」と話した。(柳原一哉)