「脳」の病気と考えられてきた<パーキンソン病>。最新研究で実は「腸」と関係があることが判明。医学博士「なので予防にはある食事を多く摂るべきで…」
◆ブラーク仮説 パーキンソン病の初期では、嗅覚障害や便秘などの症状が生じ、その後、病気が進行するにつれて、日中に眠くなったり睡眠中に夢体験と同じ行動をとってしまうレム睡眠行動異常が起こったりし、その後、認知機能の低下などが見られるようになります。 実際、パーキンソン病の患者は、健常なヒトと比較して4~6倍ほど認知症を発症しやすく、患者の約3割、発症から10年以上経過した患者の約7割に認知症が見られます。 異常型α-シヌクレインは、まず腸管の情報を受け取る求心性迷走神経で凝集しはじめ、その後中脳へ輸送され、そこから次第に大脳皮質全体へと広がることが、2003年に明らかになりました(1-2)。 つまり、パーキンソン病は、異常型α-シヌクレインが、腸管の情報を受け取る求心性迷走神経から中脳の黒質のニューロンへと輸送されることで起こるのではないかと考えられたのです。 ドイツの病理学者・ブラーク夫妻が提唱したので、この仮説はブラーク仮説と呼ばれるようになりました。 ブラーク仮説が提唱される前までは、パーキンソン病患者ではドーパミンを分泌するニューロンが減っているため、健常なヒトのドーパミンを分泌するニューロンを移植すれば、パーキンソン病を治療できるのではないかと考えられていました。 しかしうまくいかなかったので、異常型α-シヌクレインが、あたかも病原体のように、腸とつながっている求心性迷走神経から中脳へ、またニューロンからニューロンへと感染してニューロンに蓄積し、その結果ニューロンを破壊して、パーキンソン病を引き起こすという仮説が提唱されたのです。
◆腸とパーキンソン病は関係している? さて、ここまで読んで、これらの疾患が脳腸相関(腸と脳が相互に情報をやり取りしながら、お互いに影響を及ぼし合っているという概念)とどう関係があるのか? と思われたかもしれません。 皆さんが感じたように、これまで単に脳の神経疾患だと考えられていたパーキンソン病は、研究が進むにつれて、腸との関係が明らかになってきたのです。 パーキンソン病では、神経症状の前に、がんこな便秘症状が見られます。また、先ほどお話ししたように、パーキンソン病の原因と考えられている異常型α-シヌクレインは、脳の中脳の黒質ニューロンだけでなく腸管を支配している求心性迷走神経にも蓄積しています。 パーキンソン病の患者の求心性迷走神経に異常型α-シヌクレインが蓄積していたことから、この異常型α-シヌクレインが体内のどこで作られ、どのようにして求心性迷走神経に蓄積するのかが調べられました。 その結果、ある種の腸内マイクロバイオータ(腸内に棲みつく微生物の集団)が、α-シヌクレインに似た構造をしているタンパク質(カーリータンパク質と呼びます)を産生していることがわかったのです。
【関連記事】
- 大腸に約40兆個「腸内マイクロバイオータ」とは?注目されたのはノーベル賞受賞学者が唱えたヨーグルト好きのあの地方の「不老長寿説」がきっかけで…
- <時差ボケ>で腸内環境が激変?医学博士「睡眠障害と肥満や大腸がんの間には関連性があることが判明していて…」
- 「老けない肉ベスト10」は?脂質の高い肉は「老ける」「太る」の原因に。寿命を延ばすには「高タンパク質な肉」を【2024年上半期BEST】
- 人類史上で最も長生きした女性が「1週間に1キロ食べた」好物とは…医師「疲れ知らずの体をつくるのに食事の変革は必須」【2024年上半期BEST】
- 老けない最強食ベスト5!冷凍で栄養価がさらに高くなる野菜とは?冷凍庫に入れる前のひと工夫で、野菜の酸化・老化を防ぐ【2024年上半期BEST】