社長就任直後に直面した、危機的状況の打開策とは|アルページュ代表取締役 野口麻衣子さん|STORY
女性としてこれからのキャリアに悩むSTORY世代。’22年に女性活躍推進法が改定されてからはますます女性の活躍が期待され始め、徐々に女性管理職比率も高くなってきています。第一線で活躍している女性リーダーの方々にお話を伺うと、そこには、キャリアの狭間で自身の生き方を見つめ、可能性を信じてチャレンジする姿がありました。今回ご登場いただくのは、Apuweiser-richeなど6ブランドを展開するアパレル会社(株)Arpegeの代表取締役社長を務める野口麻衣子さんです。 【困難な状況下では、行動し続けることが打開策を見つける鍵】
STORY編集部(以下同)――どのような経験を経て、社長に就任されたのでしょうか?
収益が安定し、4ブランドを展開するようになった頃から、アプワイザーを含めた全ブランドのディレクターを兼任しました。ブランドのコンセプト作りやシーズン毎の方向性の決定、洋服のディレクションを8年ほど担当。経営面以外は全て手がけていました。 ブランドディレクター時代は、社長という役割は私には難しいとずっと感じていて。経営者の両親からも「こんなんじゃ無理だ」と言われていたくらい。でも親も70歳を過ぎて、そろそろ…という思いが出てきたようで、覚悟を決めて2017年に社長に就任しました。 両親から事業承継し、社長に就任したのは2017年。思い返すと、よくやったなと自分を労いたいくらい怒涛の日々でした。社長になる半年前に第二子を出産し、育児と仕事の両立にも四苦八苦する中で社長に。その3年後に大流行したのがコロナウイルスだったんです。当時、ニュースで流れてくる情報にみんなが惑わされ、誰にも正解がわからない状態。世の中全体が混沌としていました。
――コロナ禍はどんな状況で、どんな風に乗り切ったのでしょうか?
緊急事態宣言を受けて、都内にあった店舗は全て閉鎖を余儀なくされました。9割の店舗が関東圏で展開しているアルページュにとって、それはもう大打撃でしたね。飲食店などはよくニュースでも取り上げられていましたが、アパレル業界も危機的な状況でした。 それでも売り上げが立たなければ生き残れないので、オンラインでの販売が生命線。毎月、単月で黒字にすることを第一目標としてスタートしました。経費を削るのはもちろんですが、まず損益分岐点を明確にしてどれだけ売り上げる必要があるのかを考える。そうすると、具体的に何をすべきなのかという行動が決まってくるんです。その対策の1つがインスタライブ。それまでほとんどやっていなかったインスタライブを、全ブランドで始めました。あとは、お店という場所が無くてもお客様と直接どうやって対話ができるかが重要で。公式LINEでのコミュニケーションも開始しました。 インスタライブでは、お客様からの声がすごく温かくて。「これ買いましたよ」というコメントがあると、それに対して別の方がコメントをくださったり。これは店舗メインで売っていた時には得られなかったこと。お客様同士の繋がりもできたし、スタッフもそれに励まされて前を向くことができた。やってみて初めてわかった貴重な経験で、インスタライブはコロナ禍でのカギになりましたね。 商品については、ライフスタイルの変化に合わせたアイテムの企画も必要でした。結婚式などは当面ないだろうとの予想でオケージョン用のドレスは控えるように。リモートワークでオンライン会議が増えた影響もあり、とにかくトップスの売れ行きが良かったので、オンライン上でも上半身が映える洋服はマスト。コンビニにさっと行ける着心地の良いワンマイルウェアも必須アイテムでした。 そもそも、「出かける機会が激減したから洋服を買いません」という理論で終わってしまうと、もうその先が広がらない。今やれることは何かを考えて1つでも2つでもやっていくことが大事なんです。会議ではそうしたアイデアを出し合い、大きな紙に1個ずつ書き出していくうちに、「こんな方法がいいんじゃない?」という意見もどんどん出てくるようになりました。それ実行して、また改善して…というPDCAを回しながら、少しずつ打開策を見出していきましたね。