ベースは極上2002 クーペ BMWガルミッシュ(2) 現代のカロッツエリアが見事に再現
オリジナルのBMW 2002をデータ化
コンセプトカーのガルミッシュを復元することを考えた、BMWのアドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、真っ先にトリノを訪問。当時79歳だったマルチェロ・ガンディーニ氏へ、ガルミッシュの再現に反対するか、意志を確認した。 【写真】2019年に再現されたBMWガルミッシュ 1970年代の傑作 3.0 CSLに2002、M1ほか (131枚) BMWが再び注目したことへ、驚いたそうだ。しかし、彼は喜んで協力を申し出た。 2018年7月、BMWのデザイン・エンジニア、セバスチャン・ヘプフル氏へ、数枚の写真とベルトーネ社に残るデザインスケッチが渡された。彼が生まれる以前に作られたプロトタイプを、現代の技術で再び設計するという、重要な任務が任された。 「初めに取り組んだのは、オリジナルのBMW 2002のデータ化。写真に合わせてシャシーとサスペンションの位置関係を確認するため、デジタルモデルを作っています」。とセバスチャンが振り返る。 「BMWクラシックを通じて、レストアされたベース車両を準備しました」。まっさらな2002がデザインスタジオへ届けられたのは、2018年10月。1970年にベルトーネが実施したように、職人の手によって、美しいクーペはバラバラにされた。 影の協力者として機能したのが、イタリア・トリノのスーパースタイル社。金属製ボディを手作業で成型することを得意とする、現代版カロッツエリアで、ガルミッシュの再現にも尽力している。イタリア人が描いたデザインを、再生する要となった。
ドアハンドルやライトは1970年代のものがベース
同社を立ち上げたのは、フランコ・パルミサーノ氏とダビデ・パルミサーノ氏、フラヴィオ・ガリツィオ氏という3名。ジョバンニ・ベルトーネ氏とヌッチョ・ベルトーネ氏がベルトーネ社を創業したように、フランコとダビデは親子だ。 既に数10年という経験を有し、フラヴィオの父はベルトーネ社で働いていた経験も持つ。金属加工に関わる技術は、次の世代へしっかり受け継がれている。 スーパースタイル社は、ベルトーネと同じく5か月でボディを仕上げたが、その工程はまったく異なった。「ドアハンドルやライトなどの部品は、1970年代のものをベースにする必要がありました」。課題だったことの1つを、フラヴィオが説明する。 「BMWクラシックの知見が非常に重要でした」。50年前なら、近場のディーラーを訪れ、フィアット130 クーペのヘッドライトを購入できただろう。BMW 2002のステアリングホイールも、簡単に入手できたはず。しかし、2018年には難しいことだった。 それ以上に頭を悩ませたのが、構造的な問題。ベルトーネは、2002を魅力的に見せるため、車高を落としただけでなく、ドアのヒンジを前方へ移動させていた。かなり大規模な加工が必要になった。 スーパースタイル社は、ボディパネルをすべて分離。骨格構造を新たに作り、開閉できる長いドアを据え付けている。これがなければ、クルマとしてのカタチを保てていなかっただろう。