ベースは極上2002 クーペ BMWガルミッシュ(2) 現代のカロッツエリアが見事に再現
オリジナルのガルミッシュは見つからず
BMWグループ・デザインのデザイナーや技術者の多くも、このプロジェクトに参画した。同社の職人技のレベルの高さには、驚かされたようだ。 コンセプトカーを製作するに当たり、現在では成形しやすいコンポジット素材を用いることが一般的。しかし昔ながらの金属加工も、走行可能なワンオフモデルの優れた基盤になるという理解を得ることに繋がった。 リクリエーションされたガルミッシュは、2019年前半に完成。しっかり、当初の予算内に収まった。 お披露目の舞台となったのは、イタリアのコンクール・デレガンスの1つ、同年に開かれたコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ。太陽の光を浴びただけでなく、紛うことなき1970年代のデザインスターは、脚光を浴びることになった。 プロジェクトを率いたセバスチャンは、密かに思い描いていたことがあった。だが、それは叶わなかったようだ。 「億万長者のクラシックカー・マニアが大勢出席するので、オリジナルのガルミッシュをガレージに保管してあると、誰かが乗り出るのを期待していました。でも、それは起きませんでした」 スーパースタイル社は、問題なく公道を走れる水準で、ワンオフの金属製ボディを仕上げられることを世界へ証明した。「ワイパーもライトも、すべて正常に機能しました。まあ、パチパチとノイズがうるさいラジオ以外は」。セバスチャンが微笑む。
BMWコンセプト・ツーリングクーペへ発展
2023年、彼は再びスーパースタイル社を頼ることになった。BMWコンセプト・ツーリングクーペを生み出すために。見事に仕上げられたシューティングブレークは、その年のコンクール・デレガンスでお披露目されている。 トリノのコーチビルダーは、ベース車両のBMW Z4を分解。職人技でユニークなボディパネルを成形し、Z3 クーペやZ4 クーペを想起させつつ、イタリアンな雰囲気を漂わせるエレガントなモデルが創出された。 ドイツ・ミュンヘンとイタリア・トリノは、アルプス山脈を挟んで、飛行機で1時間ほど。クリエイティブな協力関係は、かつてのベルトーネ社のように、今後も強化されていくことだろう。 執筆:スティーブ・サクスティ(Steve Saxty) 画像:BMWグループ