「保険とは“損な賭け”のことである」若いビジネスパーソンに必要な保険はたった3つである理由
保険とは「損な賭け」のことである
働き始めたいわゆる社会人の初期に意思決定を間違いやすいものに生命保険がある。セールストークに乗せられて、あるいは保険会社に就職した友人に付き合って不要な保険を契約しがちなので注意しよう。 保険については二つの大原則を押さえておけ。 第一に、保険は「滅多に起こらないが、起こった時の損失が壊滅的な事象」に備えて「仕方がなく加入する」ものだ。 第二に、保険は保険会社が得で加入者が損をするようにできているものだ(そうでなければ保険会社が潰れる!)。 漠然と「安心するために」保険に入るのは愚かな行為だが、セールスする側はその心理につけ込もうとしてくる。感情に流されるな。 若いビジネスパーソンがどうしても必要な保険は、自動車を運転する場合の任意保険、火災保険、それにお金が十分ない状態で子どもが生まれた場合に稼ぎ手に掛ける死亡保障の生命保険(子どもが成人するまでの期間のシンプルな保険。必ず掛け捨てで、保険料の安い保険を選ぶ)くらいだ。相続の際に使う保険について考えるのは、将来でもいいだろう。
お金は、シンプルに管理して、おおらかに使う
ちなみに、父は最近癌にかかったが、健康保険に加入していれば、民間のがん保険は不要だと改めて確認した。治療に掛かった費用は健康保険を利用すると普通の貯金で十分に賄える金額だった。つまり、保険を使う必要はなかったということだ。 「事後的には」がん保険に入っていれば入院費や交通費などが保険から出て、その方が得だった可能性はあるが、癌になるかどうかが分からない意思決定段階の「事前の問題としては」、がん保険は加入者側が損で保険会社側が儲かる賭けなのだから(確率は保険会社が考えて計算してくれている)、がん保険には入らないことが正解なのだ。 この「事前」と「事後」の区別が分からない人は、おそらく保険以外にも多くの分野で「カモ」になり続けるにちがいない。 収入や支出をどの程度管理するかは個人の趣味の問題でもあるが、将来に向けて毎月必要だと思う貯蓄(実際にはインデックスファンドへの投資だ)ができていれば、細かな収支は気にしない方針をお勧めする。 稼いだお金はおおらかに使うといい。特に自分への投資を渋ると将来の自分が貧相になってしまう。自己投資の中身は、(1)知識、(2)スキル、(3)経験、(4)人間関係、(5)時間、だ。 そして、人生の途中でお金が足りないと思ったなら、節約よりも先に「もっと稼ぐ方法はないか」と考えるようであってほしい。 君の人生はその方が圧倒的に面白くなるはずだ。 図/書籍『経済評論家の父から息子への手紙』より 写真/shutterstock
---------- 山崎元(やまざき はじめ) 1958年、北海道生まれ。東京大学経済学部卒業。東京大学を卒業後、三菱商事に入社。野村投信、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一証券、明治生命、UFJ総研など計12回の転職を経験。コンサルタントとして資産運用分野を専門に手掛けるほか、経済解説や資産運用を中心に、メディア出演、執筆、講演会多数。ズバリ語る辛口の経済解説、マネーコラムで人気を博している。 ----------
山崎元