ステーブルコイン、いつ出る? 何が変わる? 何を変える?【JBW Summit at IVS Crypto】
日本円ステーブルコインのニーズはあるか?
神本:日本円にペグされたデジタルマネーのニーズとは何なのか、あらためて説明してほしい。 岡部:サークルやJPYCは、世界中のステーブルコインを同じ規格にしたいと考えている。サークルは最近フランスでヨーロッパのライセンスを取り、ユーロのステーブルコイン「EUROC」を出した。EUROCはUSDCやJPYCと同じ規格になっている。最終的には全世界のステーブルコインを同じ規格にしたいと思っている。規格が共通化されれば相互の決済がより素早く、より低い手数料で可能になるからだ。 これを実現するためには、ライセンスの相互互換性が必要だ。例えば銀行は各国にライセンスがあり、日本でいう「電取業」のようなライセンスや、ステーブルコイン発行のためのライセンスが各国で整備されている。そして、ステーブルコインを交換するためのライセンス整備が、今各国で進められている。実現までに5年もかからないと見ている。 神本:日本円にペグされたデジタルマネーは、海外からもニーズはあるのだろうか。 鳩貝:一般に、円建てのものを何か買いたいとか、円建てで投資をしたいといったとき、海外から円へのニーズが出てくるだろう。将来的に、ブロックチェーンの円建てのデジタル財への需要が高まった場合に、これと交換が容易な日本円に連動するブロックチェーン上のお金が求められる、といったシナリオはイメージできる。
ステーブルコインの未来は?
神本:ステーブルコインはどんな「決済の未来」を実現するのか? それぞれの立場から教えて欲しい。 近藤:たとえば給与の支払い・受け取りなどには、当たり前のようにステーブルコインが使われるようになるだろう。暗号資産業界では、もはや海外の仕事はUSDCでの取引になっていて、銀行口座を使わなくてもほぼ問題がない。そんな世界がこれから来るのではなく、「もうある」ことを知ってほしい。ただ、PayPayのような少額決済など、ブロックチェーンがあまり向いていなくて、影響が少ない分野もあるだろう。 鳩貝:決済の未来については、今日ご紹介いただいた各社の取り組みをはじめとして、多様なマネーが共存し交換が容易になる中で、社会全体のフリクションが減るイメージがある。その多様なマネーの中に、もしかするとCBDCも入っているのかもしれない。 日銀の貨幣博物館に行くと、貝や布、お米など様々なものがお金として使われてきたことがわかる。展示の中には、大勢の人が「これはお金だ」と思うものが、その時代その地域で「お金」として使われてきた、といった趣旨の文言があるが、中央銀行のお金や民間事業者のお金の共存のイメージを踏まえると、非常に示唆的だ。 CBDCの検討のためには、スタートアップも含めた大勢のみなさんとの対話が必要だ。こうした取り組みが、豊かなエコシステムにつながれば素晴らしいと思っている。 渡邉:ユースケースという意味では、Play To Earnがキーワードだと思っている。「使えば使うほど楽しい」という素敵な仕組みを作っていきたいと思う。 マーケット拡大時に大事なことは2つある。ひとつは多様性で、選択肢がそれなりにあること。そして、もうひとつは適度な競争だ。より良いものを作って届けようと、多様なプレイヤーが適度な競争でより良いものを作っていくことが必要だ。ステーブルコインの世界でも、それは成し遂げられると思っているし、ソニー銀行として、そこに少しでも貢献したいと考えている。 岡部:JPYCはいま2つの作戦を考えている。ひとつは、サービスやモノでお返しするステーブルコインにしたいという考え方だ。私は青ヶ島に移住して2年経ち、漁師に弟子入りしてマグロを釣ったりもした。例えば、JPYCを持っていたら、野菜や魚が届くというような世界を実現して、銀行が出すコインとは違うメリットを出していきたい。 もう1つの作戦は、AIフレンドリーで「色のない」お金にしていきたいということだ。当社は企業系列もないので、誰でも使いやすい……例えば起業したばかり人や個人でも使える、使い勝手のいい民間のお金として普及させていきたい。 神本:法施行から1年経ち、今後ステーブルコインが続々と登場し、さまざまなユースケースも出てくるだろう。進捗を楽しみにしたい。 ● なお、CoinDesk JAPANを運営するN.Avenue株式会社は、7月5日・6日に一般社団法人JapanBlockchainWeekと「JBW Summit at IVS Crypto」を共催。また、7月31日まで続く「Japan Blockchain Week」のメイン・メディアパートナーを務める。 |文:渡辺一樹|編集・写真:増田隆幸※編集部より:一部本文を修正し、更新しました。
CoinDesk Japan 編集部