ステーブルコイン、いつ出る? 何が変わる? 何を変える?【JBW Summit at IVS Crypto】
日本企業の信頼性を基盤にしたJOC
神本:JOCの取り組みをもう少し詳しく教えて欲しい。 近藤:私はもともと1年間ソニーでEdyやFelicaに携わり、実は古くから決済系に取り組んでいたキャリアがある。その後ウェブブラウザ「Lunascape」を世に出すため独立、起業し、その縁で世界最初のウェブブラウザを作ったティム・バーナーズ=リー(Tim Berners-Lee)氏と会った。 彼はDID(分散型ID)と決済が結びついていないから「Webはまだ不完全だ」と言っていた。たしかに従来のカード決済などは古い仕組みを使っていて、手数料も高い。Web3はインフラ自体がブロックチェーンになっていくという点が、革新的にすごいところだ。 なぜ、我々のようなスタートアップが何千億円もかけて作られた旧来システムと同じようなことを実現できるかというと、そのための仕組みが世界中のコミュニティによって作り上げられていて、我々もそこに相乗りできるからだ。ただ、速度面であったり、日本の法規制に適合するという観点でいくと、条件を満たすブロックチェーンは見つからない。それがJOCを立ち上げた経緯だ。 いまは、ブロックチェーン上でステーブルコインを発行したい金融機関に向けて、コインスタジオというSaaS型のサービスを提供している。このサービスを使えば簡単にステーブルコインを発行できるようになっている。 地銀との取り組みも進んでいて、きらぼし銀行、みんなの銀行、四国銀行などと実証実験を進めている。我々は銀行型ステーブルコインも、信託型ステーブルコインも両方扱っている。タイミングは認可次第の部分もあるが、今年から来年初めには各行から実際にステーブルコインが出てくるはずだ。 神本:地方銀行がステーブルコインを出す理由を教えてほしい。 近藤:銀行にとってステーブルコインは、預金と同じようなものだ。いずれ全銀行が始めることになるだろう。そうなれば、ステーブルコイン同士の競争が激化するはずだ。たとえば、持っていると金利が付くとか、テーマパークのNFTチケットがもらえるとか、そうしたサービス競争が起こってくるだろう。海外ではすでにそうした動きが起きている。 特に地銀の場合は、地元支援という側面も出てくるだろう。たとえば、一定エリアでコインを使うとちょっと安くなるとか、融資もステーブルコインだと何かメリットがあるとか、そういったことも考えられる。 神本:ステーブルコインの発行側が、他のチェーンではなくJOCを選ぶメリットは? 近藤:たとえばイーサリアムでは、ハードフォークが起きたときの法的問題や、MEVの弊害としてのフロントランニング問題があると言われている。我々の仕組みではこうした問題は起きず、他チェーンに比べた場合の優位性があると考えている。