Bリーグ香川のパワハラ暴力事件発覚と処分はなぜ1年以上も遅れたのか?
バスケットボールのBリーグは8日、B2に所属している香川ファイブアローズの衛藤晃平ヘッドコーチ(36)が飛び蹴り、平手打ちなどの暴力行為及び暴言などのパワハラ行為を行っていたとして1年間の公式戦にかかわる全職務の停止処分を科した。またチームにも100万円の制裁金を科すと同時に内部調査が不十分で管理責任を果たさなかった村上直実社長にけん責と制裁金100万円、津田洋道エグゼクティブコーチ(取締役)にもけん責と制裁金50万円が科せられた。大河正明チェアマンが、同日緊急会見を行い、なぜ2年前に起きた暴力事件の発覚と処分が遅れたかを説明したが、今後の再発防止に向けて大きな課題を残した。今日9日には処分を受けた香川の3人が謝罪会見を行う。
暴力事件は2年前、告発は1年前にあった
暴力事件が起きたのは、2017年12月に行われた公式戦の試合後。衛藤ヘッドがロッカーで某選手に対して飛び蹴り、胸倉をつかみ暴言を吐く行為をした。また、それ以前にも練習で1回または2回にわたる平手打ちの暴力行為があり、11 月頃には、練習で衛藤ヘッドが、選手のプレーに激昂し、同選手の首を掴みゴール下から体育館の壁まで押しやり、暴言を吐く行為を行った。当該選手は、暴行やその他の暴言等により精神的に追いつめられ体調を崩すに至った。 この日、緊急会見を行った大河チェアマンによると、認定された暴力事案は、この3件で被害者は2人。また主に若手の選手に対し試合中あるいは練習中、日常的に暴言を吐き、チームスタッフに対しても同様の暴言行為を行っていた。暴言の被害者は、特定の選手に集中していたが、スタッフも含めて複数名に及ぶという。 一番最初にパワハラの告発があったのは昨年だった。2018年1月に香川と対戦したアウエーのチームからBリーグに対して「香川のヘッドコーチがパワハラ行為を行っている噂がある」という告発が行われ、事態を深刻に捉えた大河チェアマンは村上社長に直接電話をして「事は重大である。しっかりと調査をして欲しい」と内部調査を命じた。だが、2週間後にあった村上社長からの返答は「いろんなところから話を聞いたが(暴力の)事実は見当たらない」というもの。1、2人にしか聞き取りをしていないという杜撰な内部調査で、衛藤ヘッドは「ちょっときつい言葉を愛情表現で言っているかもしれないが暴力はない」と暴力を否定する嘘の証言をしたという。 さらに2018年の4、5月に行われる選手の契約更新の際に、複数の選手から「衛藤ヘッドがいきすぎた指導を行っている」という情報がチーム関係者にもたらされ、「幸か不幸か暴力はなくなった」(大河チェアマン)そうだが、チームとして具体的な手を打たなかったため暴言は後を絶たず、次の2018-2019年も「シーズン中、試合前等に実施のミーティングにおいて、直近の試合における所属選手のミスプレーについて、同選手を厳しくなじり、また、他の若手選手に対しても、試合中のミスプレーについて質問攻めにする、怒鳴り散らすなどの行為」(広報発表文書)を続けていた。 日常的に行われた暴言の中身は、人格を否定するものや「試合で使わない」などヘッドコーチの優位性を利用したパワハラだった。 見かねた関係者がいたのだろう。 今年3月に日本バスケットボール協会の「インテグリティ(健全)委員会」に対して、それらのパワハラ行為を指摘する一通の投書が届いた。