Bリーグ香川のパワハラ暴力事件発覚と処分はなぜ1年以上も遅れたのか?
この日、偶然にも、各チームのヘッドコーチを集めるヘッドコーチミーティングがあったため、その冒頭の時間を使い、大河チェアマンは、チーム名を伏せた上で、今回起きた事件を説明。 「信頼は1日でなくなる。八村、渡邊が出てきて富樫の年俸1億円のグッドニュースに大きく水をさす。対岸の火事と考えず、襟をただし、自分らのチームで受け止めて欲しい」と訴えた。今月末には、B1、B2の実行委員会があるため、改めてパワハラ撲滅と、クリーンバスケットの精神の徹底を呼び掛けるという。 大河チェアマンによると、日本スポーツ協会に上がってくる指導者によるパワハラの事例報告は、競技者が多いことも手伝ってバスケット界が一番多いそうだ。Bリーグでは昨年、不祥事が相次いだため、オフコートキャプテン、メンター制度を作り、対策に乗り出しているが、他クラブでも同じく表に出ていないパワハラ行為があるのではないか?との疑念は残る。 大河チェアマンは、「外国籍のヘッドコーチのチームにはないのではないか、という期待があるが、日本人指導者のチームの場合、類似したものが絶対ないとはいえない」と見ている。ミニバスケットや、中、高校生の部活の一部にも、まだ昔ながらの「パワハラ指導は愛情の裏返し」という考え方が根強く残っており、今回の聞き取り調査の過程でも「自分が悪いから怒られているという選手が多い」と感じた。「人間の尊厳として、暴力、暴言はダメだという本来の主旨までいっていない。選手自身が、パワハラは絶対に許されないということを知ってもらいたい」と大河チェアマンも、まだBリーグの理念が浸透していないことを懸念している。 またBリーグはプロの契約社会のため、「契約を続けてもらうためには波風は立てられない」というパワハラ告発が難しいという運営の体質がある。告発窓口はできているが、選手の生活や人権を守ってあげる環境の整備も必要だろう。 「クラブの経営者の質をあげて企業として成長していかねばならない。だいたい(経営)財務の悪いところ、ガバナンスがないところでこういうことが起きる。クラブライセンス制度は、財務、施設だけを見ているわけではない。プロはどこからの報酬で成り立っているかをそれぞれが自覚してレベルアップしていかねば。もう一度、真摯に重く受け止めて再発防止に取り組むしかない」 大河チェアマンは、そう声をあげた。 ただ、本来ならば、全チームに現場の指導状況を調査させ、アンケートを取るなどしてパワハラの有無を報告させるべきだが、その予定はないという。今回の事件を受けてのBリーグとしての再発防止対策は、まだ不十分。真の「クリーンバスケット」実現へ、課題は残ったままだ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)