使い方しだいでこんなに変わる…間違えると「病状が悪化する」湿布の危ない使用方法…上皇陛下の執刀医が教える
湿布薬を多用すると、降圧薬の効きが弱くなることも
エヌセイズが血圧に及ぼす影響を検討した報告によれば、平均5mmHg(ミリメートルエイチジー)程度の血圧上昇を招くとされています。血圧が正常な高齢者がエヌセイズの使用を開始した直後から、血圧が高血圧の区分にまで上昇し、使用を中断すると血圧が正常化したという報告もあります。それだけ、エヌセイズは血圧に影響するのです。 もともと高血圧の人であれば、エヌセイズの過度な使用は、狭心症、心筋梗塞、大動脈解離といった心臓疾患を発症するリスクが高くなる可能性があるのです。 またエヌセイズは、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、ARB(アンジオテンシン受容体)拮抗薬、利尿薬といった降圧薬と相互作用があります。 つまり、普段から血圧の薬を飲んでいる人が、安易に湿布薬を多用していると、気づかないうちに血圧の薬の効き目が弱くなり、血圧が高い状態のまま過ごすことにもなりかねないのです。湿布薬を使うときは相当な注意が必要です。 さらに、先ほども少しふれたように、エヌセイズは長期にわたって使っていると体内に水分を貯留させます。すると、頻脈などの不整脈、息切れ、浮腫といった心不全の症状が表れる場合があります。 これは、人工透析の患者さんにも同じような症状が見られます。体内にたまった水を一気に吐き出したり、再びたまったりすることを繰り返していると、心房は水がたまっている状態に対して鈍感になり、心房細動が起こりやすくなります。 すると、心拍出量が少なくなるので、だんだんと心房が大きくなっていきます。その結果、心臓の働きが落ちて血液の流れが悪くなり、心房内で血栓ができやすくなります。それが脳の血管に移動して詰まれば脳梗塞を引き起こします。 こうしたリスクがあるため、心臓にトラブルがある人は安易に湿布薬を使ってはいけません。 とりわけ、近年登場した「ロコアテープ」と呼ばれる経皮吸収型非ステロイド性鎮痛消炎剤(一般名:エスフルルビプロフェン・ハッカ油製剤)は効き目が強力で、2枚貼っただけで主成分の血中濃度が飲み薬を服用した場合と同程度まで上昇します。 そのため、「1日1回、患部に貼付」「同時に2枚を超えて貼付しない」と、上限2枚までの用法・用量が決められています。また、心臓疾患に対してよく使われる抗凝固薬の「ワルファリン」との併用にも注意が必要とされています。 さらに<【後編記事】その処方は要注意…やっぱり薬は「飲みすぎてはいけない」多剤処方がもたらす「意外なリスク」【医師が予防医学から警告】>でも、天野篤氏による、病気の治癒するために必要な知識を明かしています。
天野 篤(心臓血管外科医)