先発落ち本田圭佑が語った。「代表が(定位置奪われる)レベルになった」
吹き荒れる逆風に、あえて身を委ねているようにも映る。ACミランで実質的な構想外となり、日本代表でもレギュラーから追われつつある本田圭佑が、自らの立ち位置をポジティブに受け入れた。 6試合を終えたW杯アジア最終予選で、本田は2戦続けて先発メンバーから外れた。代わりに右ウイングに入った久保裕也が、敵地で日本時間24日未明に行われたUAE(アラブ首長国連邦)代表戦の前半14分に、代表初ゴールとなる先制点を叩き込んだ。 今冬に移籍したヘント(ベルギー)で7戦5発と急成長を見せる久保は、後半7分にはMF今野泰幸(ガンバ大阪)の追加点もアシスト。価値ある勝利をもたらした23歳の若武者へ、埼玉県内で25日に行われた帰国後の初練習を終えた本田は「嬉しいですよ」と声を弾ませた。 「別に危機感がないというわけではなくて、これがサッカーのスタンダード。僕がミランでもここ代表でもレギュラーポジションを取られている、というだけの話なので。何ら不思議なことではない」 飢えた獣のようにギラついた目が、萎えるどころか、ますます燃え盛る闘志を物語る。視線は28日に迫った、タイ代表戦へまず向けられた。 昨年9月に苦杯をなめたUAEへの借りを返した直後の一戦。会場は慣れ親しんだ埼玉スタジアム。チケットはすでに完売。しかも、相手は最終予選未勝利の最下位。好条件が揃っているからこそ、一歩間違えれば落とし穴にはまる恐れもある。 「(気持ちが)緩くなるよね。それは危ない兆候。思った以上に難しい試合になると気持ちを締めて、簡単なパスを簡単に通すとか、基本的な部分から入っていくことが大事。お洒落に2人くらい抜いてやろうとか、そういうことじゃない。タイはけっこうやるから」 キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)に続き、今野までが故障で離脱した。フィールドプレーヤーでは長友佑都(インテル・ミラノ)と並ぶ最古参になった30歳の本田は、おのずと精神的な支柱をも担う。これまでと変わらない忌憚なき言葉で、油断や慢心が大敵になるとメディアを介して警鐘を鳴らした。 実際、タイはオーストラリア代表と引き分け、UAEや首位のサウジアラビア代表とも終盤まで接戦を演じている。アウェイ戦ということで、28日は自陣に引いてカウンター狙いに徹してくるだろう。 つまり、日本がUAE戦でほぼ完璧に実践した、中盤での激しい守備から相手の最終ラインの裏を狙う戦法が成り立たないおそれがある。だからこそ、本田は漂いかけている楽観論を一蹴する。