先発落ち本田圭佑が語った。「代表が(定位置奪われる)レベルになった」
「いまの代表のサッカーは、相手に攻められるほうが特徴を生かせるのかなと感じる。だけど、次は日本のカウンターが阻まれるというか、カウンターをさせてもらえない。これって大変なんじゃないかなと」 引いた相手を崩すにはボールと人を動かしながら、守備網に生じるギャップを突く攻撃を根気強く繰り返していくしかない。ポゼッションも求められるなかで、フィジカルの強さを生かしたボールキープに長けた本田は、試合展開によっては途中出場から流れを変えるジョーカーとなりうる。 「(ボールを)保持するイメージが皆さんのなかでわきますか、という話ですよね。僕らはわかさないといけないけど、課題はまだまだある。UAE戦だけでは、それ(ポゼッション)をイメージさせるほどの内容は見せられなかった。UAE戦と同じサッカーをしたら、いい試合ができるということではないので」 本人は意識していないかもしれないが、いままで通りの「本田圭佑」を貫き通すことで、短期的にはタイ戦へ臨むチームのメンタルと戦術を変える触媒になる。そして、中・長期的には、ハリルジャパンにようやく生じた競争原理をさらに加速させる存在にもなる。 リオデジャネイロ五輪世代の旗手として台頭し、確固たる結果も残しつつある久保に、決して白旗をあげたわけではないと本田は淡々と語る。 「むしろ日本代表がそれ(自分がポジションを奪われる)くらいのレベルになってきたと、僕はとらえていいと思っている。ここで(久保と)競ることができて、もう一回レギュラーを取り返すような状況を作れれば、日本代表がもっといい感じになるんじゃないかと」 世代交代を甘んじて受け入れるつもりはない。かつて本田に挑戦状を叩きつけられた中村俊輔(現ジュビロ磐田)のように、徹底して抗ってみせる。バチバチするような火花の散らし合いがチーム力を高める相乗効果を生み出すことを、身をもって経験してきたからこそ捲土重来を期す。 「自分がミランで出られていないことがひとつの要因だし、現状ではなかなか打開する場がない。道筋や方法は見えていますけど、それを話すと長くなるので。いまはやれることをやる、ということ」 道筋とはおそらく、ミランとの契約が満了する今夏を待って、自身が望む新天地へ違約金なしで移籍することをさす。5月末まで続くリーグ戦で出番なしに終わる代償を伴いかねない決断に、本田は不敵に笑う。 「だけど、僕はいまがすごく楽しい。自分自身を試されている気がして」 この男が言うと、不思議と強がりに聞こえない。本田の逆襲がハリルジャパンをさらに進化させる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)