クルマと都市がともに進化 メルセデスの考える2040年の自動車社会
クルマづくりと都市開発は連携するべきだ
メルセデス・ベンツが定期的に実施しているワークショップ。2024年は2日間にわたって開催され、前回紹介した1日目(やめたと言っていたのに新エンジンを開発! メルセデスの次世代パワートレイン戦略を読み解く<https://www.webcg.net/articles/-/51145>)に続き、今回は2日目の「Future Experience」について。 【写真】メルセデスが予測した未来の都市の姿とは? ロサンゼルスと深センも見る(10枚) メルセデスは以前から、クルマづくりと都市開発は緊密に連携するべきという独自の見解を持っている。今からもう20年近く前のこと。当時の研究開発センター内を特別に見せてもらったとき、そこには仮想都市のジオラマが置かれていて、小型カメラを付けたクルマがそこを走り回り、人間が都市部でどのような運転をするのか、どういった危険に遭遇するのかをシミュレーションしていた。そのデータを元に、将来のクルマに実装するべき装備や機能などを研究していたのである。 今ではシミュレーション技術も発達し、ジオラマやミニカーはもはや必要なくなったようで、2040年以降のロンドンやロサンゼルス、深センといった具体的な都市の行く末の予想を発表した。このシミュレーションをするにあたり、メルセデスは社会学者/哲学者/科学者/建築家などとも知識ネットワークを構築、デジタル化や気候変動によっての世界の各都市の変化を分析したという。
都市の成長に合わせてクルマも進化
例えばロンドン。先進性と歴史や伝統の融合が見込まれる都市では、古い建物と新しい建物が限られたエリアに混在する。道路の大幅な拡張や延伸は見込めず、交通渋滞や駐車スペース不足を解消するために、自動車や自転車、公共交通をつなぐハブとしての役目を担うような集中大型駐車場が整備される。市内中心部の道路を走るほとんどが電気自動車(BEV)のバンやカーゴバイク、ロボタクシーとなり、内燃機のみの車両は見かけなくなるという。 いっぽうロサンゼルスはエリアが広大で依然としてクルマでの中長距離移動が主体となり、個人所有車の数が多い。デジタル化を推進し、クルマ同士や都市部の駐車場などとの双方向通信によりスムーズな交通環境を目指す。自家用車の50%近くがBEVになる可能性が高いので、車両搭載型を含めた太陽光発電の積極的利用が進む。 そして深センは包括的な5Gモバイルネットワークがすでに構築されているので、ロンドンやロサンゼルスよりもデジタルトランスフォーメーションが進み、リーダー的存在となる。人工知能、コネクティビティー、デジタルインフラによる交通管理や、自動運転車両の増加、ロボットやドローンを使った物流の整備が進む可能性もある。 こうした“都市の成長”に対応できる装備や車両の開発は、将来を見据えて今から準備をしておかないと間に合わないので、メルセデスはすでに着手しているとのことだった。BEVや燃料電池車(FCEV)や自動運転がいまだに広く普及しない主な原因は自動車メーカー側というよりも、国や地域のインフラといった行政側にもある。このギャップを埋めるためにも、未来の都市像を具体的にイメージすることが、無駄のない効率的なクルマの開発につながるということなのだろう。