「おかしくなりそうだ」動物の声、金属音…昼夜問わず騒音 北朝鮮から韓国“国境”のまちに響く攻撃
コラム「特派員オンライン」
北朝鮮側から聞こえてくるのは、金属を切り裂くような不安をかき立てる音だった。 韓国のソウル中心部から路線バスで50分程度走ると、南北軍事境界線から約1キロの坡州(パジュ)市に着く。バスを降りた途端、「ギギー、グオーン」という奇妙な音が聞こえてきた。カフェに避難すると女性店主が「昼夜を問わず鳴り響いていて、おかしくなりそうだ」と話してくれた。 【音声】対岸の北朝鮮側から昼夜を問わずなり続ける騒音=11月24日午後3時ごろ、韓国・坡州市 店主によると、北朝鮮の「騒音攻撃」は、お化けを想像させるような音や動物の声、金属音、判別できない言葉などで、周辺が静かになる夜から朝にかけては特に響くという。 展望台に上り望遠鏡で川の対岸にある北朝鮮側をのぞくと、約4~5メートルありそうな緑色のスピーカーが立っていた。周辺には、畑のあぜ道で袋を抱えて歩く住民や、畑から煙が上がる光景も見えた。道路も舗装されていない荒涼とした風景は、時代をさかのぼったかのような錯覚を生む。 展望台では家族連れがコーヒーを手に「あんな暮らしをしてるなんて不思議ね」と話していた。戦争によって「線引き」されなければ騒音に苦しむ人もなく、対岸でも温かい家族の生活が営まれていただろう。一つの民族を引き裂いた戦争が憎い。(韓国北西部・坡州市で、山口卓)