「贅沢バイキング」から「ほったらかし」まで…廃れた宿が蘇る“オンリーワン”戦略とは
卒業後、JPモルガンなどの外資系証券会社で働いたが、「いつか自分でホテルを作ってみたい」という夢は持ち続けた。そんな山本をヘッドハンティングしたのがフォートレス・インベストメント。ホテル事業を始めるにあたり、山本に白羽の矢を立てたのだ。 転職した山本が担当したのは「ウィークリーマンション東京」の買収。その前身は「ツカサのウィークリーマンション」。80年代、1週間単位で部屋を借りられる新しいビジネスモデルで話題になった会社だ。 フォートレスはウィークリーマンションを次々とホテルに変え、ホテル運営の会社も立ち上げた。それがマイステイズ・ホテル・マネジメントだ。 7年前、その会長に抜擢された山本はウィークリーマンションに続き、各地の経営不振に陥ったビジネスホテルの再生に取りかかった。 千葉市の「ホテルマイステイズ蘇我」はどこにでもあるようなビジネスホテルだったが、「何か“ウリ”を」とロビーに作ったのがケーキ店「SONIA COFFEE&CAKE」。専属のパティシエも雇い、オリジナルのケーキや焼き菓子を売り出した。 実はこの周辺にはケーキを食べられるカフェがあまりなかった。そこで毎月、新作のケーキを出すと、近隣からスイーツ目当ての客が来てくれるようになった。ケーキが話題になってホテルの宿泊客も増えたという。 「『またこのケーキが食べたい』と来館する宿泊のお客様もたくさんいるので、カフェがあることによって宿泊にも影響があると思います」(矢内賢太郎マネジャー) 山本のオンリーワン戦略はビジネスホテルから始まった。その一つが札幌市の「ホテルマイステイズプレミア札幌パーク」。市内の中心地にあるホテルだが、ロビーの奥へと進むと、そこには森のような空間の「Farm to Table TERRA」が。人気アウトドアブランドの「スノーピーク」とコラボしたグランピング・レストランだ。
「ローストビーフと温泉卵のピラフ」はアウトドアの定番、熱々のスキレットで出てくる。街中でもグランピング気分を味わってもらおうという趣向だ。 こうして、どこにでもあるビジネスホテルに新名所が生まれた。