“もはや安くない”鳥貴族。客離れを招いた“相次ぐ値上げ”は悪手だったのか
経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は旧鳥貴族HDから社名変更したばかりの株式会社エターナルホスピタリティグループについて紹介したいと思います。 同社は均一料金が売りの「鳥貴族」を軸に規模を拡大してきました。長年「税抜280円均一」を維持し、安い居酒屋の代表格として消費者に認知されています。しかし、2017年以降は値上げを余儀なくされ、コロナ禍もあって業績は急激に悪化しました。従来の鳥貴族業態は限界を迎えているようです。とはいえ、ファストフード業態の開発やM&A、海外展開など、再起を図るべく近年では新業態を模索しています。鳥貴族の歴史と近年の施策について探ってみました。
2010年代に大きく躍進。2017年に600店舗に
「鳥貴族」は1985年、東大阪に1号店をオープンしました。翌86年からは250円均一の全品均一価格制を導入し、安さを訴求して店舗展開を図ります。消費税3%が導入された89年に税抜280円均一とし、それ以降は長年の間、価格を維持し続けました。運営元のイターナルサービスは鳥貴族の他にも様々な居酒屋を展開していましたが、95年からは「鳥貴族」を単一業態として資源を集中させます。その後2005年に関東1号店をオープンし、2007年には100号店を達成しました。 2009年に社名を鳥貴族へと変更した後、2010年には200号店、その2年後には300号店を達成するなど、著しく規模を拡大しました。関東・関西・東海を中心に全国的に展開しています。280円という圧倒的な安さ、そして均一価格の分かりやすさが消費者に受けた形と言えます。2016年には東証一部への鞍替えと500号店の開店を果たし、17年に600号店を達成しました。 なお鳥貴族では原則としてFCオーナーの一般募集をせず、社員の独立や既存のFCオーナーによる出店を通じて店舗を展開しています。鳥貴族ではFCをTCC(鳥貴族カムレードチェーン)と呼び、カムレードには「同志」という意味があります。24年7月期第2四半期時点で鳥貴族業態の直営店は398店舗、TCCは237店舗です。