「贅沢バイキング」から「ほったらかし」まで…廃れた宿が蘇る“オンリーワン”戦略とは
後日開かれたビュッフェメニューの試食会。地元で見つけた料理の中に「きのこ鍋」や「納豆カツ」もあった。ただしビュッフェで取りやすいよう、トンカツではなく「納豆メンチカツ」に。 「ビュッフェで出すには、糸を引くと汚いのでもう少し研究したいね」(山本)などと改良は必要だが、この2品は4月のグランドオープンで提供することが決定した。 〇マイステイズの再生術3~集客の目玉をつくる 山本が今、特に力を入れているのが全国にブランド展開している「亀の井ホテル」。もともとは日本郵政が簡易保険加入者のために始めた「かんぽの宿」だが、赤字続きで32施設を売却。そのうち29施設をマイステイズが手がけることとなったのだ。 熊本・阿蘇市、阿蘇のカルデラの中にある「亀の井ホテル阿蘇」。このホテルの再生で山本が始めたのは中庭でのプロジェクション・マッピングだ(月2回開催、無料)。表現しているのは阿蘇の四季。夜の中庭に出てもらい、大自然の中にいることを感じてもらう。これで新たな客を呼び込んだ。 目玉には地域性もとり込んでいく。水濠の町、福岡・柳川市にある「亀の井ホテル柳川」ではロビーを出てすぐの場所に船着場を設置。柳川観光の名物、どんこ舟による川下りをホテルのサービスに組み込んだ。
こうした目玉作戦で平均稼働率はかんぽ時代の58.1%(2019年)から78.5%(2023年)と20%アップした。 「各地域の特長は必ずあるので、こういうロケーションや設備はオンリーワンだなと、『泊まらなきゃ損』というくらいの面白さを提供しなくてはいけない」(山本)
原点は学生時代の一人旅~ビジネスホテルにも個性を
山本の自宅の本棚には旅の本がぎっしり。書店が立ち並ぶ東京・神保町にも月に一度は足を運ぶという。 「世界のホテルの本などを読むと、改装のインスピレーションになったりします」(山本) 1996年、早稲田大学法学部に入学した山本は、夏休みや冬休みになると海外に出かけ、行く先々で出会った個性的なホテルに心を奪われたという。 「ヨーロッパを旅すると個人経営や小さいチェーンの個性の強いホテルがいっぱいあって衝撃を受けました」(山本)