「贅沢バイキング」から「ほったらかし」まで…廃れた宿が蘇る“オンリーワン”戦略とは
一方、塩原温泉の「八汐荘」は昔ながらの温泉旅館。25年間続いてきたが、2021年に廃業した。ここのオンリーワン戦略は「『ほったらかしの宿』というコンセプト。『何もおもてなしをしない』が一番の魅力だと思います」(エリア支配人・岡野睦)。 かつては1泊2食付きのよくあるスタイルだったが、接客や料理をなくし素泊まり一泊1人4500円~と料金を下げた。するとキャンプで一泊した後にわざわざ立ち寄ったという夫婦など、以前は来なかった客を呼び込んだ。 山本は既存の施設を活かしながらアイデアを駆使。極力コストをかけずに各地のホテルを再生してきた。
10年で3倍に急拡大~マイステイズ驚きの再生術
東京・六本木にあるマイステイズ・ホテル・マネジメントの本社従業員はホテルのスタッフを含め7000人余り。売り上げは1200億円に上る。親会社はアメリカの投資会社「フォートレス・インベストメント」。マイステイズは「フォートレス」が取得したホテルを再生し、運営している。手がける施設は増え続け、この10年で3倍に膨れ上がった。149棟は国内5位にあたる。 〇マイステイズの再生術1~自前の「リノベーションチーム」 マイステイズには一級建築士を中心としたリノベーションチームがある。だから例えば会議室を客室に変えるといったこともどんどん実現できる。低コストかつスピーディな改修が可能なのだ。 茨城・つくば市で今年4月リニューアル・オープンを目指す「つくばグランドホテル」。筑波山の麓で71年続いた老舗だが、経営不振に陥り、2023年に売却を決めた。その改修を「リノベーションチーム」のリーダー・西澤翔吾が託された。 「屋上にインフィニティ露天風呂をつくろうとしています」(西澤) インフィニティバスとは縁のない浴槽のこと。もともとある露天風呂を、幅もワイドに広げて、関東平野と境目なくつながる絶景風呂に変えようとしているのだ。 〇マイステイズの再生術2~知られざる名物を発掘 「つくばグランドホテル」の視察後、山本たち一行は居酒屋「庄助」へ行き、この地域の名物料理を片っ端から頼んでいく。茨城名産の「あん肝」や、日本酒のあてに人気の珍味「ゆずみそ」は柚子の中に味噌を詰めて干したもの。極めつきは「きのこ鍋」だ。こうして客を喜ばす隠れた名物を探しだすのだ。 「グルメが何なのかイメージが湧かない地域で特長を出すには、もう一歩踏み込んで実地調査をして、面白いネタを見つける必要があるかなと」(山本) 続いて行った定食屋「ダイニングまつば」では、トンカツの上に水戸納豆が乗った「納豆カツ」に遭遇した。