税理士「今期の利益は500万円です」→社長「えっ、せいぜい300万円のはずが…」中小企業が必要以上に課税所得を増やさない“裏ワザ”【税理士が解説】
現行の会計制度は、大企業やその株主向けの内容となっています。そのため、中小企業がそのまま活用すると、必要以上の課税所得を作ることになりかねません。本記事では、税理士である稲垣保氏の書籍『可視化会計 本当の利益を掴む術』(総合法令出版)より一部を抜粋・再編集して、中小企業の社長であればしっかりと把握しておきたい「利益の区分」について解説していきます。 都道府県「開業率&廃業率」ランキング
ある社長と税理士との会話
決算打ち合わせ時によくある税理士と社長さんとの会話です。 税理士:社長、今期の利益は500万円です。 社長:そんなに利益は出ていないよ。何かの間違いではないですか? せいぜい300万ぐらいだと思うよ。 税理士:でも社長、前期と比較して売掛金が50万増加し、在庫も30万増加しています。それから、120万の車も買っているので、利益が500万出ている計算で間違いありません。 社長:そうですか……(売掛金はまだ入金になっていないし、在庫も車もお金が出て行ってしまったものなのに、これにも課税されるのか……?) さて、この税理士と社長さんとの会話をどう思われますか? 確かに、現行会計制度のルールでは500万円の利益が出た計算になるのですが、この利益は、期間損益計算のルールに基づいて計算された株主への配当可能利益です。私は、この配当可能利益を現行会計ルールに基づいて計算された「例外の利益」だと言っています。しかも、この500万円が税金計算上の課税所得の基準にもなります。 私の提唱する時点利益資金会計では、稼いだ利益のお金500万円から使った利益のお金(50万円+30万円+120万円=200万円)を引いた300万円が残った利益のお金になります。しかも、この残った利益の300万円から税金を引いた利益のお金が財務を強くする“本当の利益”だということです。 そして、税金の計算の基になる課税所得は500万円だということです。法人税率を30%で計算すると、法人税額は150万円となり、300万円の残った利益のお金に対する法人税率は、実に50%になるということです。 このことを強く理解して、無駄な節税に走ることなくまた無駄な出費を極力なくす努力をしないと財務は強くならないという現実を認識すべきです。