税理士「今期の利益は500万円です」→社長「えっ、せいぜい300万円のはずが…」中小企業が必要以上に課税所得を増やさない“裏ワザ”【税理士が解説】
社長は「利益のお金」と「借金のお金」を区分する
一般的に「お金=現預金」には色は付かないと言われていますが、その根拠の説明がありません。実は、お金の3つの機能のうちの「交換支払機能」の側面から見たらお金には色は付かないのです。しかし、「蓄積機能」の側面から見たらお金には、「自分で稼いだ利益のお金」と「借金のお金」があることは少し考えていただければご理解していただけると思います。 問題は、この区分の方法を教えてくれる会計学が世界的に今までなかったことです。目に見えているお金(可視貨幣)そのものには、色は付きません。しかし、目に見えていないお金(不可視貨幣)には、「利益のお金」(黒字)と「借金のお金」(赤字)があるから、これを区分することが重要になります。 これから、この目に見えていない2つのお金(不可視貨幣)について説明をし、疑問にお答えしたいと思います。 唐突な質問に感じる方も多いと思いますが、改めて「本当の利益」とは何なのでしょうか? 素直に考えてみてください。本当の利益とは、現実に「利益のお金」として存在していないと意味がありません。なぜなら、「本当の利益」とは、自分で稼いだお金だから、現実的に使えるものなのです。 しかし、現行会計学では、期間損益会計が求める利益がどこに存在しているのか? その説明がありません。その上で、損益計算と資金計算は別物だと述べています。 このように期間損益会計の損益は、売上高から経費を控除した差額という計算上の損益なので、この損益がどこに存在するかの説明ができないのだと思います。 その原因の1つは、期間損益を求めるために商取引以外に減価償却費や引当金などの商取引以外の仕訳を取り込んでいることです。2つ目の原因は、一定期間のすべての商取引を損益計算書と貸借対照表に区分表示し、その差額として損益計算をしていることにあります。 現行会計は、株主への配当可能利益を報告するための期間損益を計算するために、商取引の損益に商取引以外の決算修正仕訳をし、損益計算書と貸借対照表に区分表示し、その差額として計算した損益だから、当然に、損益計算と資金計算は別に計算するルールになっているのです。 すなわち、損益計算は、売上高と経費の差額として計算をし、資金計算は、入金額と出金額の差額として計算することになっています。 では、商取引上の損益計算の原則は本当に、損益計算と資金計算は別物なのでしょうか? 商売には、必ず相手が存在するから、必ず「お金」が動きます。ですから、信用取引の債権・債務の決済後は、必ず損益計算と資金計算は一致するハズです。 すなわち、売上高等という「利益のお金」の入金額から仕入高等という「利益のお金」の出金額を差引して、プラスであれば「利益のお金」が残っていることになり、マイナスであれば「借金のお金」が残っていることになります。 商売の原則は、儲けのお金を稼いで残すことだと考えます。そうであるならば、「本当の利益」とは、「儲けのお金」として存在していることが原則だと考えます。現行会計が、損益計算と資金計算が別物だというのは、別物になるような減価償却・引当金繰入・時価評価などのルールがあるからです。 この期間損益を求めるルールは、株主等への報告会計としては原則だとしても、商売の原則から見ると例外的なルールなのだと考えます。 本当の利益は、商取引から生まれるものなので、現行会計が求める損益計算書と貸借対照表に区分する前の複式簿記で言う試算表の中に、本当の利益は隠れていることになります。 では、どこに隠れているかお分かりですか? 現在、ほとんどの会計学者・税理士および会計士さんは、株主等への報告会計だけしか学んだことがありません。そのため、この損益と資金の関係を明確に説明できないでいるのが現実となっていると思います。 なぜなら、現行の期間損益会計を教える会計学者はいるのですが、時点利益資金会計を教える会計学者がほとんどいない状況だからです。 稲垣 保 有限会社マーフシステム代表取締役 財務経営コンサルタント、税理士
稲垣 保