軽商用EVを投入したホンダの姿勢。ホンダ「N-VAN e:」は、今後のEV時代に大きな変化をもたらす
個人で宅配業を営む場合、できるだけクルマを長持ちさせるため、エンジンオイル交換を頻繁に行う事例もあるようだ。しかしEVであれば、オイル交換の必要もなくなるので、そのメンテナンス費用も浮くことになる。バッテリー劣化が懸念されるが、普通充電であれば劣化の心配はほぼないともいわれる。日産が「リーフ」や「サクラ」で使っているものと同様のバッテリーをN-VAN e:は車載するので、日産での実績が参考になるだろう。
10年ほど前の2015年、私は軽自動車を扱う各自動車メーカーに、「100km、100万円、軽商用EV」という概念を提案し、実現を求めた。それに対する回答は、ほとんどが総論は理解できるが、各論として実現不可能ということだった。その中で、唯一、本田技術研究所の社長は「ホンダこそが挑戦すべきことだ」と答えた。 それがときを経て、N-VAN e:で実現されたことになる。 商用車でEVを実現するのは難しいと思う。商用車は生産財であり、乗用車の消費財と違い、それで商売するのだから価格と性能にきびしさがある。しかし、それを達成できれば、乗用車への付加価値の追加が可能になる。それが私の提案の趣旨だった。
■N-VAN e:から見えたEV時代の未来 N-VAN e:での挑戦は、この先、軽乗用車へ発展していくだろう。そして、軽自動車で魅力ある商品性と価格のEVを実現すれば、それは登録車のコンパクトカーや小型車への展開も可能になり、まさにEVの量販車種が実現するのである。そうなれば、現在は高価格帯に偏りのあるEVの選択肢が広がり、いよいよEV時代の到来を迎えることが夢でなくなる。 単に1台のクルマの性能や商品性だけでなく、未来のクルマ社会を切り拓く広い視野で見たとき、N-VAN e:に勝る新車は目に入らないのである。
御堀 直嗣 :モータージャーナリスト
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