京都国際、甲子園優勝校史上最も狭いグラウンドで築き上げた「堅守」、優勝の背景にあった超個性的練習の数々!【主筆・河嶋宗一コラム『グラカンvol.34』】
京都国際の選手はノック中、ランニングスロー、ジャンピングスローを難なく決めて、ファンたちを魅了させています。これも今の選手達の傾向を考えて指導していました。 「今の選手たちは上半身で投げてしまう選手が多い。ジャンプして跳んでいる間に、上半身の力が抜けて、正しく体を使えて、勝手にボールが離れて、上手く投げられる。その感覚を掴む練習です」(小牧監督) 2008年から京都国際の監督に就任した小牧監督は、年々、入学する選手たちの守備の意識、守備に求められる身体能力が低下していることに危惧したようです。そのため現在の守備練習が生み出されました。この守備練習はメディアを通して、かなり知られるようになりました。小牧監督によると、一部の学校は「高校野球ドットコム」が公開している京都国際の練習動画を参考にしたとか。
勝つよりも次のステージで活躍できる選手を育てるのがポリシー
京都国際の指導方針として次のステージで通用する選手を育成するのが指導ポリシーです。小牧監督は、「勝ちたかったら良い選手を揃えて、将棋の駒みたいに動ける子を作れば、負けにくいチームになりますけど、甲子園に出ているのにどこからも声がかからない選手もいっぱい見てきました。結果だけを出すことを求めるよりは高校で花が咲かなくても、その子の持っているエンジンを最大限にして上の世界に送り出したいと思っています。その過程に甲子園があるという考え方ですね」 こうした指導方針が中学生、中学の指導者の間にも人気が高まり、年々、入学する選手のレベルが高まり、5年連続で高卒プロ輩出につながりました。 2021年秋の取材が終わり、小牧監督に来年の新入生について質問しました。京都国際は寮の人数に限りがあるため、1学年20人が原則。20人を超えたら、次の年は18人、といった運営をしています。スカウティングを担当する岩淵 雄太コーチが全国を飛び回りますが、21年夏の甲子園ベスト4入りしたことで、入学志望が殺到。断る連絡が多かったといいます。その中で、小牧監督の心を捉えた中学生がいました。 「脚光を浴びるのはショートタイプが多く、ショートの中学生の志望が多くなっていました。その中で京都国際でやりたい!と熱意を持ってFAX1枚を送ってくれた選手がいました。その子は福岡の糸島ボーイズの選手なんですけど、実際に見たら、面白い子で守備が上手い。ちょうど枠が空いたので、入学が決まったんです。覚えてください」 その選手こそ、優勝チームの藤本 陽毅主将です。早くからベンチ入りし、注目していました。実に守備がうまく、京都国際に相応しいショートへ成長。今年は藤本選手を中心にまとまりのあるチームとなりました。