年収3,500万円。AI時代の新たな高収入職種とは?
MLエンジニアに求められるもの
そんな企業のDXの中心的役割を担うであろうMLエンジニアには2つのスキルが必要だと言われている。それは「技術的スキル」「非技術的スキル」である。 技術面では、高度なプログラミングスキルはもとより、アルゴリズムへの本質的理解、機械学習モデルの設計・最適化に必要な数学的知識、データの適切な解釈、結果の信頼性を評価するための統計学の深い理解が不可欠である。特に、深層学習や強化学習などの先端技術に関する知識と実装能力は、今後ますます重要になると予想される。また、大規模なデータ処理や分散コンピューティングの技術、クラウドプラットフォームの活用能力、AIモデルの運用や保守、継続的な改善を行うためのMLOps(Machine Learning Operations)の知識と経験も重要性を増している。 非技術面では、ビジネス課題を理解し、AI解決策を提案する能力、複雑な技術を非技術者に説明するコミュニケーション能力が問われる。さらに、AI技術の急速な進化に追随するため、常に最新動向を学び続ける姿勢が求められる。特に近年、AI倫理への注目が高まっており、公平性、透明性、説明可能性、プライバシー保護などに対する深い理解は欠かせない。加えて、AI技術が社会に与える影響を多角的に分析し、持続可能な開発を推進する視座の高さも求められる。 つまり、MLエンジニアには、高度な技術力だけではなく、ビジネス感覚、コミュニケーション能力、学習能力、倫理観など、領域横断的なスキルセットが求められることが分かる。技術を追求する従来のソフトウェアエンジニアとは一線を画す「ハイブリッド型人材」であり、この複合的なスキルセットの希少性に加え、企業におけるAI技術の重要性が給与を押し上げる要因となっている。
AIの社会実装が生む新たな人材需要
AI関連の人材需要は、MLエンジニアにとどまらず、テクニカルリクルーターや施設管理者といった新しい職種も創出している。 テクニカルリクルーターとは、企業のAI・技術チームを強化するための優秀な人材を見つけるのが役割だ。エンジニアの能力を評価するため、リクルーターも当然ながらAI技術に関する深い理解と、候補者を評価する能力が求められる。テクニカルリクルーターの給与も上昇傾向にあり、前年比で約20%増加したとの報告もある。 施設管理者は、AIやIoT技術を導入したスマートビルディングなどの施設で最新のテクノロジーを理解し、効率的に施設を管理できる人材を指す。施設管理者には、エネルギー管理、セキュリティ、環境モニタリングなど、AI技術を活用した様々なシステムを統合的に管理する能力が要求される。 その他に、AI技術の開発や運用における倫理的問題を分析し、ガイドラインを策定するAI倫理スペシャリスト、AIプロジェクトの計画立案から実行、評価までを統括し、技術チームとビジネス側のニーズを調整するAIプロジェクトマネジャーなど、AI技術の社会実装に対応する職種も誕生している。