人狼ゲームの恐ろしいルールに着目しつつ、王道コメディーに仕上げた「ルー・ガルー:人狼を探せ!」
「人狼ゲーム」で遊んだことがあるという人は日本でも近年かなり増えてきたように感じる。いわゆる〝正体隠匿(いんとく)ゲーム〟と呼ばれる「人狼ゲーム」は、簡単にまとめると人々の味方である「村人(市民)チーム」と、人々を毎晩ひとりずつ食べてしまう「人狼チーム」に分類されるいくつかの〝役職〟がプレーヤーたちにランダムに配られ戦うゲーム。 【写真】ジャン・レノが絶妙にとぼけたおじいちゃん役! 「ルー・ガルー:人狼を探せ!」の一場面 「村人チーム」は村人が全滅するまでに誰が「人狼」なのかを当てて全滅させることを勝利条件とし、「人狼チーム」は自分が「人狼」であることを隠したまま村人たちを全滅させることを勝利条件(※)とするのだ。そんな「人狼ゲーム」をコンセプトにした映画「ルー・ガルー: 人狼を探せ!」がNetflixで配信されている。 ※ルール上は「人狼と村人が同じ人数になったら人狼の勝ち」だが、それは残った人狼が次のターンで村人を全滅させられることが確定するからであり、本質的には互いに相手の全滅が勝利条件といえる。 「人狼ゲーム」では毎ターンに昼と夜が存在し、昼の話し合い・多数決で最も人狼の疑いが濃いと思われたプレーヤーは〝処刑〟され、村人チームは人狼の犠牲者が減ることを望むが、誤って無実の人間を処刑してしまうと人狼の襲撃はそのまま続いてしまう。 改めて文字に起こすと、なんと恐ろしいコンセプトのゲームだろうか。ゲームのシステムとして行っているため感覚がマヒしがちだが、行っていることはまさに魔女狩り。証拠もなく、〝多数派が選んだ〟という理由で〝処刑〟が行われ、それが誤りだとわかっても「あら残念」程度のリアクションで次の犯人探しに進んでしまうのだ。
主人公一家が中世の街にタイムスリップ
「ルー・ガルー: 人狼を探せ!」はこのゲームの恐ろしいルールに着目したコメディーファンタジー映画。嫌みをチクチク言い合いながら過ごす主人公一家が、なんと「人狼ゲーム」に使うカードの魔法によって中世の街にタイムスリップしてしまうのだ。その街では毎晩誰かが人狼によって命を奪われ、毎日誰かが〝疑い〟だけで処刑されるというリアルな人狼狩りが行われており、一家はそんな街の狂乱に巻き込まれてしまう。 「人狼ゲーム」の面白さは複数存在する〝役職〟にある。日本でよく採用される役職としては、特定のプレーヤーを人狼から守れる「騎士」、1ターンに1人のプレーヤーを占い、その相手が人狼かどうかを知ることができる「占師」などがメジャーだが、そういったさまざまな能力を持つ〝役職〟があること、そして誰もが自分の〝役職〟についてうそをつけることによって、ゲームに駆け引き、読み合いが生まれるのだ。 種類は少し異なるものの、今作では〝役職〟システムも取り入れられ、タイムスリップした家族はそれぞれが何かしらの〝役職〟をもっている。ひとりは透明人間、ひとりは読心術(千里眼)を持っているなど、それぞれの持つ能力が明らかになっていく特殊能力者系の作品としても楽しめる。そして、「人狼ゲーム」においては「人狼」も〝役職〟のひとつ。家族の中にも人狼がいるかもしれないとビクビクする展開ももちろん用意されている。