「聖域」と化したタカラヅカ 経営トップの寵愛を受け、いつしか構造的パワハラの温床に 宝塚歌劇団が舞台を守るために必要なことは何か
俳優の女性(25)の急死をきっかけに、宝塚歌劇団内部の苛烈な上下関係が明るみに出た。歌劇団から依頼を受けた外部弁護士らが調査し、11月に公表した報告書は女性へのいじめやハラスメントは「確認できなかった」と結論付けている。しかし、関係者へ取材を進めていくと、調査結果とは異なる証言が複数寄せられた。 【写真】叱責され「まだかえれん」急死俳優のLINE公表
「絶対的な上下関係に基づく構造的なパワハラの温床となっている」 事実だとすれば、こうした時代遅れの慣行が続いたのはなぜか。歴史をひもとくと、阪急電鉄の一部門に過ぎない歌劇団が、創業者や経営トップの寵愛を受け「聖域」と化した実態が浮かんできた。華やかなショーの陰で独善がはびこっていなかったか。多くのファンを持つ歌劇団が悲劇を生まずに公演を続けるため、必要なことは何か。(共同通信=宝塚歌劇団問題取材班) ▽歴代トップの強い思い入れ 宝塚歌劇団がスタートしたのは1914年。創立したのは阪急電鉄の創業者小林一三だ。小林は経営する鉄道の沿線で百貨店を開業するという私鉄の新たなビジネスモデルを確立し、東宝映画も設立した。幅広い事業を手がける傍らで「歌劇作家」としての顔も持ち、歌劇団のために28本の作品を制作した。 宝塚歌劇100周年に刊行された公式書籍には、こんな記述もある。 「一三翁が特に深い愛情を持って取り組んだのが、宝塚歌劇だった」
経営トップの強い思い入れは、親会社の阪急阪神ホールディングス(HD)で大きな影響力を持つ角和夫会長に受け継がれた。 角氏も歌劇団に曲を提供していた。ペンネームは「岸一眞」。2010年からタカラジェンヌを養成する宝塚音楽学校の理事長を務め、今年12月1日付で退任している。 一時、歌劇団の上場が検討された際に壁となって立ちはだかったのも角氏だ。2006年、阪急HD(当時)の筆頭株主だった投資会社が、歌劇団や東宝のコンテンツを管理する新会社を設立して上場させる案を構想した。 しかし、当時阪急HDの社長だった角氏が断固反対した。「上場すればつぶれることもある。90年以上続いた宝塚をそうするわけにはいかない」 ▽阪急は”パトロン”、「歌劇団には口を出さない」 あるグループ関係者は、阪急阪神HD内での歌劇団の位置付けを分かりやすく説明してくれた。「阪急の人は皆、歌劇団のことが大好き。普段から観劇にも行く。一方、阪神タイガースはそれほどでもない」