「聖域」と化したタカラヅカ 経営トップの寵愛を受け、いつしか構造的パワハラの温床に 宝塚歌劇団が舞台を守るために必要なことは何か
親会社はパトロン的なスタンスを取っているという。 「阪急阪神HD内では歌劇団が一部門という認識はないと思う。劇場を運営するのは事業でも、歌劇団は事業ではなく芸術。自分たちのコンプライアンス(法令順守)やガバナンス(企業統治)を適用すべきだとは考えていないように見える。パフォーマンスの場を提供し、困っていたらお金も出すが、歌劇団自体に口を出すものではない。パトロンのようなものだと思っているのだろう」 歌劇団は長年、赤字体質が続いた。ところが、1974年に「ベルサイユのばら」が大ヒット。これを皮切りに、1990年代以降は親会社の支援も受け、今や阪急阪神HD内でも有数の収益源となるまでに成長した。 在阪証券アナリストはこう指摘する。 「ブランド力があり稼働率も高い。グッズ販売やライブ配信なども好調で、HDの中でも安定的な稼ぎ頭の一つだ」 ▽OGや家族が証言するパワハラ、洗脳
亡くなった女性の遺族側は「ヘアアイロンを額に当てられた」「稽古中に怒号を浴びせられた」などのいじめやパワハラを訴えていた。しかし、外部弁護士による調査報告書はこれを否定。「長時間の活動による心理的負荷の強さ」を指摘した。 ただ、関係者が取材に証言してくれた内部事情は、遺族側の主張と重なる。 ある歌劇団OGが暴露した中身はすさまじい。 「どんなに暴言を吐かれても上級生には反論できず、謝り続けるしかない。家族などに相談するのも『外部漏らし』と呼ばれご法度。厳しさを超えて懲罰的なパワハラの構造がある」 匿名を条件に取材に応じた現役タカラジェンヌの家族が問題視するのは「2年制の音楽学校で厳しい稽古を乗り越えた卒業生のみが歌劇の舞台へ進む」という特殊なシステムだ。 「10代で学校に入り、度を越した厳しい指導や労働環境が当たり前だと洗脳されてしまう。上級生から人格否定のような暴言を吐かれ続けても、睡眠時間が足りなくても、自分が悪いからだと思い込み、自分を責めるようになってしまっている」