トランプの勝利で、米中激突は不可避なのか…?「トランプvs習近平の暗闘史」をプレイバックする
米中間の「貿易戦争」
「米中貿易戦争」に関しては、7月6日、アメリカが第1弾として、340億ドル分の中国製品に対する追加関税を発令。中国もただちに、同額の対抗措置を取った。 8月23日、アメリカが第2弾として、160億ドル分の中国製品に対する追加関税を発令。中国も再び、同額の対抗措置に出た。 9月24日、アメリカが第3弾として、2000億ドル分の中国製品に対する追加関税を発令。今度はテレビ部品から冷凍肉に至るまで、5745品目に及んだ。これに対して、中国側の対抗措置は、600億ドル分。もう「弾」は尽きてしまったのだ。 この3度の「パンチの打ち合い」で疲弊したのは、明らかに中国側だった。いくら中国が台頭してきているとはいえ、経済規模はようやくアメリカの7割。横綱と大関の間には、歴然とした力の差があった。 トランプ政権は、さらに追い打ちをかけるように、10月4日、マイク・ペンス副大統領が、激烈な中国批判のスピーチを行った。アメリカは国を挙げて「中国叩き」を行うべきだと説いたのである。 12月1日、1年1ヵ月ぶりに、ブエノスアイレスG20(主要国・地域)に合わせて行われた米中首脳会談は、習近平主席がトランプ大統領に屈する格好となった。この時の模様は、首脳会談に同席したジョン・ボルトン安保担当補佐官が、回顧録『トランプ大統領との453日』(朝日新聞出版、2020年)で詳述している。 だが、アメリカは中国を許さなかった。同日、同盟国カナダのバンクーバー空港で、ファーウェイの孟晩舟副会長兼CFO(創業者・任正非CEOの長女)を逮捕するという「荒業」に出たのである。これでまた米中関係が沸騰した。 その後も紆余曲折あり、2019年5月9日~10日、ワシントンで開かれた第11回米中閣僚級貿易協議で、両国は「完全決裂」した。この頃には、米中双方とも強硬派が台頭してきており、トランプ大統領と習近平主席は、これに迎合する道を選んだのだ。5月16日、アメリカはファーウェイを「エンティティ・リスト」(制裁リスト)に加えた。 「米中貿易戦争」は結局、2020年1月15日、「第1段階の経済・貿易協定」に両国が署名して、一応、矛を収める格好となった。合意内容は、1-知的財産権、2-技術移転、3-農業、4-金融サービス、5-為替レート、6-貿易拡大、7-紛争解決の7章で構成されていたが、中国側が譲歩した内容だった。 2019年6月9日、「一国二制度」を敷く香港で、逃亡犯条例の改正を巡って、「100万人デモ」が勃発。それから約半年にわたって、民主派のデモは続いたが、アメリカは11月27日、香港人権民主主義法を成立させ、香港への監視と介入を強めた。 一方、中南海では、「アメリカが背後で香港のデモを煽(あお)り、中国共産党政権の転覆を謀っている」という「アメリカ陰謀論」がまかり通った。その結果、2020年6月30日に、香港国家安全維持法を制定。「香港人が治める香港」から、「愛国者が治める香港」へと変えた。 もはや香港人が北京政府を批判することなど、不可能となった。この法律は、「香港に恒久的な居住権を持たない者が、香港以外で本法が定める犯罪を行った場合は本法を適用する」(第38条)とあることから、香港人に「火星法」(火星人が火星で中国を批判しても処罰される法律)と揶揄(やゆ)された。 2019年8月5日、トランプ政権は、「中国を為替操作国に指定する」と発表。「米中金融戦争」も起こった。1994年以降、アメリカから為替操作国に指定された国はなく、しかも2019年5月下旬に、アメリカ財務省が「中国は為替操作国ではない」と認定したばかりだった。アメリカの突然の発表を受けて、11年3ヵ月ぶりに1ドル=7人民元を突破する元安ドル高局面に入った。