トランプの勝利で、米中激突は不可避なのか…?「トランプvs習近平の暗闘史」をプレイバックする
習近平がトランプの「恐ろしさ」を感じた瞬間
2017年4月6日、トランプ大統領が就任して3ヵ月にも満たない時期に、習近平主席が、米フロリダ州にあるトランプ大統領の別荘「マー・ア・ラゴ」を訪れた。この時の1泊2日の米中首脳会談で、習主席はトランプ大統領の「恐ろしさ」を体感させられた。それは「二つの予期せぬ出来事」によるものだった。 一つ目は、初日の会談で、いきなりトランプ大統領が突きつけてきた「ビッグ・ディール」である。それは、「核とミサイル実験を繰り返す北朝鮮の暴走をストップさせてくれ。その見返りとして、南シナ海は中国の海にして構わない」というものだった。中国側は、南シナ海に7ヵ所もの人工島をこしらえたことを強く非難されると覚悟していたので、虚を突かれた。 もう一つは、ディナーで、トランプ大統領お薦めの「ニューヨーク風ショートロイン上部ステーキ」を饗された後に飛び出した、「今晩のデザートはトマホーク・ミサイルだ!」という発言だ。米中首脳会談の最中に、シリアに59発ものトマホーク・ミサイルを撃ち込んだことを喜々として明かし、習主席の度肝を抜いたのである。 ともあれ、習主席は帰国後、北朝鮮を抑え込むため、4月15日の「太陽節」(故金日成主席の生誕105周年)に合わせて、金日成総合大学に留学経験のある張徳江全国人民代表大会常務委員長(中国共産党序列3位の国会議長)を送り込むことにした。ところが北朝鮮側が、「太陽節の革命事業は国内だけで行う」として、張徳江訪朝団の受け入れを拒否したのである。 4月12日に、習主席がトランプ大統領に釈明の電話を入れると、トランプ大統領は激昂。「中国と北朝鮮は裏でつながっている」と邪推して、習主席に「もうやらない」と断言していた「航行の自由作戦」を、5月24日に敢行したのだった。 「航行の自由作戦」は、南シナ海が「自由航行の海」であることを示すため、あえて中国側が「自国の領海」と主張している海域を、アメリカ軍の軍艦が「無害通航」する示威行為だ。2015年10月に、バラク・オバマ政権が強行して以降、米中間の火種の一つとなってきた。 そこで中国は、トランプ式の「商人外交」に成果を与えることで、アメリカを味方につける戦略に出た。同年11月8日~10日にトランプ大統領を北京に招き、「皇帝式接待」に徹したのである。その前月に北京で開催した第19回中国共産党大会で、自身の権力基盤を盤石のものとした習近平主席は、トランプ政権を味方につけて、さらに安定化を図ろうとしたのだ。