ファンケル完全子会社化で一体感とシナジー醸成、キリンHD新社長が描く「ヘルスサイエンス事業急成長」のシナリオ
■ 「晴れ風」ヒットに見る商品開発の新提案とCSV先進企業への道 ──現状、売上高全体の中で一番大きいボリュームは祖業の酒類、とりわけビールですが、今年4月に発売した新ビールの「晴れ風」がスマッシュヒットとなりました。 南方 おっしゃる通り酒類事業も重要な事業であり、晴れ風は「一番搾り」や「ラガー」とも違う、麦芽100%使用でありながら飲みやすいタイプのビールとして提案させていただきました。 発売以来、苦みを抑えてすっきりした味わいの評価が、特にノンビールユーザーだった若年層を中心に受け入れられています。おかげさまで、年間の販売数量計画も430万ケースから550万ケース(1ケースは大瓶24本換算)まで上方修正することができました。 晴れ風には「晴れ風ACTION」(花見や花火といった日本の風物詩を守る活動に売り上げの一部を寄付する取り組み)も付帯しており、われわれのCSV経営に沿って、微力ながらも社会課題解決に貢献する商品コンセプトが好感を持って受け止めていただいていると感じています。これからの時代は単に商品が良いだけでなく、こうした打ち出し方も大事だという点を再認識しましたので、今後の商品開発のヒントにもなっていくと思います。 ──キリングループの長期経営構想である「KV2027」は、来年から最後の3カ年になります。キリングループの近未来像をどう描いていますか。 南方 世界のCSV先進企業になるという、従来から掲げている大きな方向性を変えることはありません。そしてビジョン実現のためには、人の力が鍵となります。 キリングループでは多様性ある組織を目指している中で、例えば今年入社した社員の4割ほどは、中途のキャリア入社組になっています。さまざまな経験やノウハウを持った方が、キリングループに入って良い化学反応を起こしながら活躍していますので、今後もダイバーシティをより強化していく考えです。 また、健康、コミュニティ、環境に関わる3つの事業はそれぞれ異なるようでいて共通の要素もたくさんあります。ですから事業間で社員の往来や異動をうまく行いながら、人財が育って各事業が成長し、ひいてはキリングループ全体も成長していく好循環の姿をうまく実現していきたいと思います。
河野 圭祐