ファンケル完全子会社化で一体感とシナジー醸成、キリンHD新社長が描く「ヘルスサイエンス事業急成長」のシナリオ
■ ファンケルとの5年間の協業で学んだ「ノウハウと障壁」 ──ファンケルの経営について言えば、3割出資してきた5年間の協業の成果をどう評価していますか。 南方 これまで共同開発した「カロリミット ブレンド茶」や「カロリミット アップルスパークリング」といった商品は、ファンケルとキリンビバレッジ双方の商品開発ノウハウを掛け合わせて発売したものです。また、ファンケルがサプリとして発売している「免疫サポート」も、プラズマ乳酸菌を使ったコラボ商品です。 ファンケルは無添加化粧品の事業などを通じて強力な顧客基盤を持っていますし、そのノウハウを、これまでは出せる範囲でキリンにも伝授してもらい、われわれのサプリ事業のお客さまの獲得効率をどう上げていくか、あるいは定期購入のお客さまに継続していただけるような施策をどう打つかなどを教えてもらってきた5年だったと言えます。 ── 一方で、なかなか思うようにいかなかった点は何ですか。 南方 ファンケルとキリンが持っているお互いの商品レシピや技術的な知的財産について共有するレベルまでは踏み込めませんでした。 中途半端な資本関係のままでは、ここまではOKだけどこれ以上は出せないといった障壁があったわけです。しかし(完全子会社化した)今後は、トップラインシナジーとコストダウンシナジーの両面で思い切って取り組めるようになります。 ──消費者のファンケルに対するイメージは、サプリ以上に化粧品分野の方が強いと思いますが、化粧品の分野ではどのようなシナジーが出てきそうですか。 南方 ファンケルはもともと不安、不便、不満といった「不の解消」を経営理念に掲げてきました。このビジョンはわれわれも非常に共感しています。サプリに関してはキリンもファンケルも持っており、いわば体の内側から健康にしていくわけですが、スキンケアの無添加化粧品は体の外側から健康にしていく商品です。 人の健康は、心と体の内と外が揃ってこそです。ですから今後、化粧品分野でもいろいろな協業が出てくるでしょう。特に免疫力と皮膚の健康は非常に関係性が深いですから、この領域の研究開発も進めながら、さまざまな提案ができるようになると思います。