ファンケル完全子会社化で一体感とシナジー醸成、キリンHD新社長が描く「ヘルスサイエンス事業急成長」のシナリオ
■ ファンケル、ブラックモアズのM&Aで期待される事業間シナジー ──2019年は、協和発酵バイオを完全子会社化し、その後ファンケルに資本参加しました。昨年(2023年)にはオーストラリアの健康食品メーカー、ブラックモアズを買収し、今年はファンケルを完全子会社化する方針です。総投資額は6600億円に上りますが、今後の投資回収や費用対効果についてどのように考えていますか。 南方 PMI(M&A後の統合効果最大化のためのプロセス)はしっかりと取り組んでいく方針です。キリンホールディングスとしても一緒に経営を支え、各社の事業が持っている強みを掛け合わせたシナジーを生みながら、これまでの投資をリターンに変えていくフェーズに入ると考えています。特にファンケルへの投資は総額3600億円になりますので、ファンケルの一段の成長が最も大きなポイントです。 昨年買収した、サプリメント商品を中心に展開するブラックモアズ(買収額は1700億円)は、特に豪州や東南アジア市場で競争優位性がありますので、ファンケルが弱かった海外での販売はブラックモアズの販路を使って補完し、積極展開していきます。 ──ヘルスサイエンス事業はトータルでまだ黒字化していませんが、今後の見通しや展望は。 南方 来年をめどに、何とかヘルスサイエンス事業全体としての黒字化を目指していきます。2019年から事業を開始して5年以上が経過していますので、すでに成果を出して黒字化しなければいけないタイミングにきていると思います。 キリンホールディングスとファンケル、ブラックモアズの事業間シナジーを生み出せれば、よりトップライン(売上高)を上げることにもなりますし、機能統合などによるコストダウンも図れます。各社が、それぞれ取り組んでいる事業により関心を持ち、グループ全体で成長していく「一体感の醸成」も私の大事な役割です。 ──機能統合という意味では協和発酵バイオも含め、ファンケルやブラックモアズをこのまま別々の子会社として置くのでなく、例えばキリンホールディングス内で社内カンパニーのような形にしていくこともあり得るのでしょうか。 南方 そうした組織形態の方向性も含めて今議論しているところで、できればわれわれとしては“ブランドビジネス”に変えていきたいと思っています。 ファンケルやブラックモアズそれぞれの企業が持っている独自の強いブランドについて、各国、地域ごとにどのブランドが一番マッチするのかを分析し、各事業間の壁を取り払って、一体的なブランドビジネスに移行していくことも選択肢のひとつと考えています。