消費者のメリットはどこにある? 「デジタル給与」開始の影で見え隠れする「厚生労働省」の思惑
仕送りもPayPayで……
首都圏で「くらしとお金」の相談室を運営する丸子いずみさんには学生の娘がいる。「仕送りは娘に希望を聞き、月によっては銀行口座にでなく、PayPayで振り込むこともあります」と話す。銀行口座への送金と違い、手数料がかからず、娘がPayPayを使う予定があれば便利だからと。娘の友人には、親からの仕送りがPayPayの人もいるという。 「PayPay」と「SNS」を使って「酒とたばこ代」を稼ぐ…最新の「トー横キッズ」事情に衝撃! 1級ファイナンシャル・プランニング技能士の丸子さんは、こうも話す。 「若い人にはアルバイト代の支払いがすべてPayPayでいいという人もいます。どれくらい電子マネーに親しみがあるのか、世代的な違いもあります。若い人で銀行口座を開設していない人は、PayPayでの支払いはウエルカムでしょう」 PayPayはスマートフォンにアプリを入れ、指定の銀行で現金か、あるいは口座からなど、チャージ(入金)する方法がいくつかある。商品購入などで支払う際は、スマホでQRコードを読み取って支払う。スマホがあれば財布を持ち歩く必要がない。 キャッシュレス後進国だった日本でも、QR決済などの電子マネーで買い物やサービス代金を支払うことが増えている。コロナ禍に非接触が好まれて普及し、電子マネーによっては利用額に応じたポイント付与の特典なども魅力だ。 ◆「デジタル給与」が8月から解禁に……「電子マネーじゃないとだめという人がいるのか」 電子マネーの普及を受け、勤労者は給与を現金だけでなく、電子マネーでも受け取れるように制度が最近、改正された。受け取れる電子マネーとして、今年8月にPayPayが認められ、ソフトバンクグールプ各社は従業員向けに「PayPay給与受取」サービスの提供を始めた。 デジタル給与払いは、勤労者の希望と同意が前提になる。受け取れる電子マネーはこのほか、楽天ペイなどが審査待ちで、対象が広がっていきそうだ。デジタル給与は勤労者に、どのようなメリットがあるのだろうか。 管轄する「厚生労働省」の説明資料では、デジタル給与導入の背景としてキャッシュレス決済の普及や送金手段の多様化ニーズへの対応を挙げ、特に自分で電子マネーにチャージする手間がなくなるとしている。 デジタル給与について、厚労省労働基準局の賃金関連の担当者は「一定のニーズがあり、選択肢の一つ。給与として振り込んでもらいたい人がいれば利用してもらえばいい」と話す。さらに、アルバイトや日雇いの人に対しても、これまでは日々現金での支払いだったが、今後は電子マネーも支払いの選択肢になるという。