原動機付自転車、令和に新生!! スズキ「e-PO」はシンプルさと便利さを突き詰めた新しい電動モペッドだった【試乗インプレッション】
また、今回は平坦な道路のみだったが、上り坂では7段ギヤを生かして力強い登坂も可能とのこと。一番低いギヤでは発進加速も力強くなるが、平坦路の一般的な状況であれば頻繁に使う必要はないかもしれない。 このほか人力のみで走るモードもあるが、こちらはバッテリーの残量が少なくなったときに使う非常用と考えてよさそうだ。
“原付=原動機付自転車”の『こういうのでいいんだよ』を具現化
動力性能は前述のような感じでありつつ、車体のフィーリングは基本的に自転車だ。折り畳み自転車としてはかなりしっかりした剛性感が印象的だが、サドルやハンドルバーなど乗り手が触れる部分の感じは普通に自転車である。 ──ライディングポジションはコンパクトなシティサイクルのもの。シート(サドル)は高さ調整が可能なので、ペダルの漕ぎやすさに合わせると足着き性ではカカトがやや浮く程度に。ハンドル位置は変わらないので、シート高を上げると上半身の前傾はきつくなる。【身長183cm/体重81kg】
フロントにはディスクブレーキを採用するが、これは制動力向上というよりも雨天などでも安定した性能を確保することとコントロール性の向上がメインだという。このほか、やや太めのタイヤや保安部品を装着していることも一般的な自転車と異なるが、体感上でさほど大きな違いはなかったように思う。 バイク乗りの感覚で率直に言えばちょっと物足りない……となりそうなものだが、そうでもない。 まず原動機付自転車がどういう乗り物かといえば、手軽で近距離の移動に適していて、通勤通学や買い物のアシなどの移動手段として重要なポジションを占めている。廉価で買えること、置き場所を大きく取らないこと、軽く小さく取り回しに優れていることなどが利点だ。そして最も手軽に取得できる原付免許で運転でき、普通自動車免許があればこちらも付随して運転可能である。 つまり、入手しやすく扱いやすく、そしてトラブルなく日々の使用に応えてくれることが求められるのが原動機付自転車(原付一種)だ。 そうした目で見たとき、e-POは最小限の要素でシンプルさと利便性を追求した原付であり、その姿はかつてスズキがパワーフリー号で庶民の移動手段を拡大していった“原点”に重なるように思えてくる。これをモーターサイクル的な視点で評価することにあまり意味はないといっていだろう。 e-POの航続距離はおよそ20kmだといい、自転車とバイクの中間くらいの近距離移動に最適。かつ置き場所は最小限で済み、軽量コンパクトなバッテリーは取り外して充電するのも大きな負担にならない。e-POは必要な要素以外を削ぎ落していった結果、「こういうのでいいんだよ」を具現化したような原動機付自転車になったのだと思う。 ──都市で生活するサラリーマンをイメージして開発したというが、幅広いユーザー層にフィットしそう。