朝ドラ『虎に翼』女性を侮ることわざが表す時代背景【週タイトルの意味を振り返り! 5~8週】
NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』は第12週まで放送された。物語全体の中盤にきたところで、これまでの約3ヶ月間の週タイトルの意味とストーリーを振り返っていきたい。今回は第5~8週をお届けする。 ■第5週「朝雨は女の腕まくり?」 「朝に降る雨はあっという間にあがって晴れるもので恐れることはない。それと同じように、女性が腕まくりをしたところで怖くはない」というもの。 この週はなんといっても寅子の父・猪爪直言(演:岡部たかし)らが巻き込まれた「帝人事件」の裁判がメイン。身に危険が迫りながらも、強大な権力に立ち向かう寅子らの闘いが描かれた。「女性が腕まくりしようと怖くはない」に反して、裁判の行方を左右したのははるの日記であり、涼子の父が入手した訪問記録であり、寅子と花江が引き出した直言の本音と真実だった。 ■第6週「女の一念、岩をも通す?」 「一念岩をも通す」だけならば「どのようなことでも一心に取り組み続ければ成就する」という意味だが、それに「女の」をつけて「女性は執念深い」という意味合いで使われることもあったようだ。 高等試験司法科に挑戦した寅子らだが、女子部からの合格者が出ない。それによって、女子部の新入生募集中止の話が出てしまい、「もう1年待ってほしい」と女子部の面々と男子学生らが頭を下げた。その時穂高重親(演:小林薫)がつぶやいたのが「水滴穿石」だ。小さな力でも積み重なれば強大な力になることのたとえである。 多くの学生らの想いを背負った寅子は無事高等試験に合格するが、帰国せざるを得なかった崔香淑(演:ハ・ヨンス)、家のために婚約を決めた桜川涼子(演:桜井ユキ)、そして夫に離婚を突き付けられて試験を受けられなかった大庭梅子との別れがあり、それもまた寅子が岩を穿つことができた理由だった。 ■第7週「女の心は猫の目?」 猫の目が周囲の明暗によって変化することから、「女心は変わりやすい」という意味になった。 弁護士として働きはじめた寅子だが、女性であることを理由になかなか担当させてもらえない。花岡とはいい雰囲気ではあったが、「妻に家庭に入ってもらいたいし、猪爪には法律の道を進んでほしい」という花岡は他の女性と婚約する。それをうけて、寅子は両親に見合いのセッティングを頼むが上手くいかない。そこにやって来たのが優三で、「社会的地位を得るための結婚相手、僕じゃだめでしょうか」と寅子の気持ちに理解を示してプロポーズし、寅子はそれを受け入れた。「女心は変わりやすい」に反して、「弁護士として社会的地位を得る」ことにかけた寅子の信念と、その手段に固執しない“路線変更”のバランスが面白いストーリー構成とタイトルだったのではないだろうか。 ■第8週「女冥利に尽きる?」 「冥利に尽きる」とは「その立場においてこの上ないほどの幸せを感じる」という意味だ。つまりここでは「女として生まれたことの幸せ/女としての幸福」を意味し、それに対して「はて?」を突き付けている。 いよいよ太平洋戦争に突入し、社会が混沌を極めた時代を描いた週。常に自分に寄り添ってくれる優三の優しさに触れて、寅子は心から優三を愛するようになる。ある意味ここは「女性としての幸せ」が描かれたのと対比して、「母になることの幸せ」についてはその複雑な胸中が強調された。母になるのは嬉しいが、体調もすぐれず弁護士としては苦しくなるばかり。先輩らが結婚・出産によって職を離れるなか、女性弁護士として自分が踏ん張らなければと自身を追い詰めてしまう。その上、妊娠が発覚した途端休職を勧められて寅子は益々困惑する(もちろん周囲に悪気はない)。妻と母でありつつ弁護士として生きていくことの難しさが強調された週だった。
歴史人編集部