能登半島地震、初動対応に問題も 防災研究の第一人者は「発災からこれまで」と「これから」をどう見るか
初動対応の在り方が問われた―。神戸大名誉教授で石川県の災害危機管理アドバイザーの室崎益輝さん(79)(防災計画)は、元日の能登半島地震直後の国や県の対応を問題視する。阪神大震災や東日本大震災などの教訓が生かされなかった部分も多いと指摘。地震から1カ月以上がたち、防災研究の第一人者は発災からこれまでをどう見ていたのか、復興に向けた提言や今後起こり得る災害への備えを含め聞いた。(共同通信=清水航己) 【イメージ】能登半島13秒差で2つ大地震か エネルギー2倍に、京大解析
▽阪神大震災の10倍以上、被害推定と実態の乖離 マグニチュード7・6という能登半島地震の規模の報に触れた際、1995年の阪神淡路大震災の10倍以上、「とんでもないことが起きている」と瞬時に感じました。直下型の地震では過去にない規模にもかかわらず、現地からの情報がすぐには入らず初期の段階では国や行政が被害を軽く見てしまったのではないかと思います。災害が起きた際に一番重要なのは現地の被害の情報を迅速、的確に把握し、被害に見合った救助などの態勢を組み立てることです。 被災の状況を軽く見たことは、国が発災後にもっとも軽い「特定災害対策本部」を設置したことにあらわれています。当日の夜に詳しい情報が上がってくるにつれ「非常災害対策本部」に切り替えられました。今回は直後の推定と実態がかけ離れていたと思います。これまでの情報把握や共有システムの限界が示されました。 初動のスイッチを現場からの被害報告で入れるのではなく、人工衛星やヘリなど空からの映像で入れることや、地震の規模で瞬時に切り替えるようにしなければいけません。直後の情報把握と初動態勢の在り方を見直す必要があります。
▽「道路が壊れていたからできなかった」では済まされない 発災直後、自衛隊や消防がヘリを出しています。建物が倒れていることには気付いていたはずです。建物が倒壊していれば下で何人も生き埋めになっていることは予想がつきますが、分析する力がありませんでした。 地震の後、道路が壊れているという情報がすぐにわかれば救助部隊や車両の出し方は変わります。直後の情報把握にミスがあり、被災者が待っているところに必要な救助隊が来ませんでした。 道路が壊れている場所に救助隊を出しすぎると「道路が渋滞する」「大きい車が通れない」などの問題は生じます。しかし、「道路が壊れていたからできなかった」では済まされません。半島という地理的特性や孤立集落が発生する地形の特性を考え、道路警戒車や救助工作車の事前配備など初動計画の見直しが必要です。 ▽ボランティア禁止で届かない細かい支援 発災から5日後に被災地に入りました。国や石川県が出したボランティアの立ち入りを禁止する呼びかけで、研究者も現地に入れないような雰囲気でした。避難所や輪島の火災現場を調査しましたが、ここでも初動の遅れが気になりました。