にしおかすみこさんの「認知症の母」との向き合い方。罪悪感はだれも幸せにならない
だれも幸せにならない罪悪感はもたないようにする
――ただ、こう言ってはなんですが、イラッとすることはありませんか? にしおか:基本的には、「できないこと」ではなく、「できること」を見るようにしています。でも…イラッとしますよ。たとえば、小さなことですけど、私、家族のごはんのつくりおきをしているんです。その保存容器はいつも母が洗ってはくれるんですけど、ヌメッとしているんです。夜中、仕事から帰ると、まずはそのヌメッとした保存容器を洗い直すんです。 ――あぁ…。 にしおか:本人は洗った気でいるし。毎回だから、内心、イラッとするわけです。でもそれはやっぱり、仕事で疲れて帰ってきたからで、元気だったら気にしないだろうなって。だから、イラッとはするけれど、きり替える方が大事かなって。イヤなことに目がいって、イラつくときって、だいたい自分が疲れて、弱っているときなんですよね。 ――いわば、心のSOS。 にしおか:はい。それを察したら、高いランチを食べに行くとか、趣味のベジタブルカービングとかをして解消します。ちょっと病みそうになったら、なるべくすぐ戻すことが大事だと思うんです。病んでしまうと、そのことにすら気づけなくなるし、おかしな判断をしちゃう。自分では戻ってこられなさそうだから。 ――ついつい、感情的な態度をとってしまうことはありませんか? にしおか:それも多少はあって、自己嫌悪ではないですけど、チクチク胸が痛むこともあります。ただ、我慢できないから言ったわけだし、後悔してもだれも幸せにならないから、そういう罪悪感は抱かないようにしているかな。 ――家族のことを文章にすることで、笑いに変えられたりしますか? にしおか:読んでくださった方に笑ってほしいと思いますが、“ネタ”ではないんですよね。それは、SMのネタつくっているときとはまったく違います。「ネタになる!」って思えるくらいの心の余裕があったらいいんですけど、日々生きるのに精いっぱいです。
ESSE編集部