【栗東便り】ディープインパクトとドウデュースは武豊だから折り合った?レジェンド語る共通点
G1・5勝馬ドウデュース(牡5、友道)が右前肢ハ行のため、ラストランに予定していた有馬記念(G1、芝2500メートル、22日=中山)の出走を取り消した。来週、種牡馬となるために北海道へ旅立つ。彼を見送る前に、皆さんにお届けしたい話がひとつある。 【写真】ディープインパクトと武豊騎手 「ディープインパクトとドウデュースは、武豊だから折り合ったと思う。ドウデュースも乗り難しい馬だと思うよ」 先日、ある競馬関係者からこんな話を聞いた。24歳の私はディープインパクトの現役時代を知らないが、乗り難しい馬という印象はない。ドウデュースも折り合いがつかないタイプではないと思う。さて、実際は? 武豊騎手本人にたずねてみた。 「推進力が半端ない。結構、引っかかるね。本気走りをした時はすごくて、抑えるのが大変。最近のドウデュースは余計に。そこはディープと共通点だね」 ドウデュースはいつも追い切りで抜群に動く。筋骨隆々の体をバネのように動かし、強烈なスピードを生み出す。レースならさらに気合も入っているだろう。手綱ひとつでコントロールするのはそう簡単なことではない。武豊騎手がジョッキーカメラについて「ブレが少ないのはよく言われる。でもドウデュースの時は僕の中ですごくきれいな映像を提供できていない」と話していたのが、その証拠だろう。 前述した競馬関係者は続けた。「ユタカは(手綱を)引っ張っているんじゃなくて、(脚を)ためて乗っている」。前進気勢が強すぎる馬は手綱を引っ張ってペースダウンさせる。折り合いがつかなければ、馬は体力を消耗して直線で伸びなくなる。レジェンドは“脚をためる”ことをどう意識しているのか。 「ためる。うん、そういう感じ。我慢させているし、こっちも我慢している。でも馬によっては引っ張りすぎて嫌気をさすし、あんばいがある。気持ちを切らさずに、逆に入りすぎてもよくないから」 馬への当たりが柔らかく、走りの邪魔をしないフォームも馬の末脚につながっている。これこそレジェンドの手腕だ。 18日水曜、武豊騎手は「まずは無事にだね」と話していた。陣営の無念は計り知れないが、無事に種牡馬入りできたことが一番だ。冬が過ぎれば、春が来る。武豊騎手がまた名馬と巡り合う日を楽しみにしたい。【下村琴葉】