老人ホームに入りたい…月7.5万円の〈生活保護費〉を受け取る66歳「要介護2」男性の悲痛な嘆き【CFPの助言】
“ギリギリで生きる”Aさんを襲ったさらなる悲劇
風呂でつまずき骨折…Aさんは「要介護2」に ところがある日、Aさんにさらなる悲劇が襲います。自宅アパートの風呂でつまずき、右の手首と大腿骨を骨折してしまったのです。 Aさんは救急車で運ばれ入院後、手術を受けました。しばらくは寝たきりの状態でしたが、やがてなんとか動けるようになり、リハビリのために転院しました。 転院先のソーシャルワーカーが、Aさんの了解を取り、自治体の福祉担当窓口と連携して、要介護認定を申請。その結果、Aさんは「要介護2」と判定されました。要介護2とは一般的に、食事排泄などは自分でできるものの、生活全般で見守りや介助が必要な状態です。 これから人生を立て直そうとしていた矢先、要介護状態になったAさん。「もう、お先真っ暗だ……この先どうすればいいんだ」。退院後アパートに戻ったAさんは、Bさんに相談。お金の専門家に助言をもらおうと、Bさんの付き添いのもと、筆者のFP事務所を訪れました。
生活保護を受けながら、「老人ホーム」への入居はできる?
Aさんは筆者に、次のように話してくれました。 「介護認定を受け、介護保険の範囲内で自宅で介護を受けることになりました。病院から、『居宅介護支援事業者』の事業所を紹介してもらい、担当ケアマネジャー(介護支援専門員)に、リハビリ中心のケアプランの作成と、歩行器や車いすなどの福祉用具をレンタルする手配をしてもらいました」 Aさんは生活保護を受けていることから、Aさんの介護には、介護を担当するケアマネジャーと生活保護のサポートを行う福祉事務所のソーシャルワーカーとの連帯が必要になってきます。 さらにAさんは、下記のように続けます。 「将来は喫茶店の経験を生かしてどこかの厨房で働きたいと思っているのですが、いまの状況ではたとえヘルパーさんの力を借りても、日常生活も1人ではままなりません。本音を言うと、リハビリに専念するためにも、一時的でいいので老人ホームに入りたいんです。でも、生活保護を受けているし、むずかしいですよね?」 生活保護を受けながら老人ホームに入居できるのか……結論からいうと、可能です。 老人ホームに入居した場合、毎月の家賃は住宅扶助から、食費や光熱費は生活扶助から支払われることとなります。 要介護度2のAさんの場合、入所できる老人ホームは有料老人ホームになるでしょう。有料老人ホームには「住宅型」と「介護付」がありますが、どちらのタイプも食事の世話などは施設がしてくれます。 介護については、「住宅型」の場合は居宅介護と同様、外部の介護業者に依頼して、老人ホームまで来てもらうか、リハビリ施設まで送迎してもらいます。「介護付」の場合は、施設内で介護が受けられます。 ただし、生活保護者の受け入れについては、施設によってさまざまなルールが設けられています。生活保護者のための料金プランを設定していたり、生活保護者の場合は入居一時金を取らないなど受け入れに積極的な施設もありますが、受け入れる人数に上限を設けているところや、生活保護者を一切受け入れていない施設もあります。 Aさんには、「生活保護を受けていると、施設の選択肢が狭まることは確かです。そのため、入居を検討する際には一度ソーシャルワーカーやケアマネージャーに相談してみることをおすすめします」と助言しました。 頼る先がない場合、「NPO法人」にサポートしてもらう選択肢も またAさんは、アパートに保証人なしで入居できましたが、一般的に賃貸物件を借りる際には保証人が必要です。 このような場合に、身元保証人になってくれたり、介護保険適用以上のサポートを請負ってくれるNPO(特定非営利活動)法人も存在します。ただし、利用の際には有料となるため注意が必要です。 Aさんが老人ホームに入居できないときは、このような支援が必要になるかもしれません。 後日、Aさんは再び筆者のもとを訪ねました。聞けば、無事老人ホームに入居できる目途が立ったそうです。 Aさんは、「生涯独身でいるとは前から決めていたのですが、コロナ、生活保護、介護と、60歳を過ぎてこんな人生になるとは予想がつきませんでした。貯蓄が底をついて、さらに自分の身体が自由に動かないことが、こんなに辛いとは……。でも、前を向くしかありませんよね」と、力強く話してくれました。 牧野 寿和 牧野FP事務所合同会社 代表社員
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